正長の土一揆

正長の土一揆（1428年）

正長の土一揆は、室町時代中期の正長元年（1428年）8月から9月にかけて起こった、初の徳政一揆です。この一揆は、当時の日本社会におけるさまざまな不安や不満の表れであり、農民や土一揆の参加者たちが借金の帳消しを求めたことが、その背景にあります。

背景

正長元年は、飢饉や疫病が蔓延し、社会不安が高まっていました。特に、この年に起こった三日病という流行病が大きな影響を与えていました。また、室町幕府内では足利義持から足利義教への代替わりや、称光天皇の死去が続き、政治的にも不安定な時期であったのです。これにより人々は「代替わり」を敏感に感じ取り、より一層の不満を抱えるようになりました。経済的にも、米などの価格高騰が借金を多く抱える人々を苦しめ、特に借金を理由にされた土一揆の主な構成員である馬借たちを過激な行動へと導く要因となりました。

一揆の発生

一揆の発端は近江国で起こった「山上山下一国平均御徳政」にありました。これに触発され、翌月には京の醍醐でも一揆が発生しました。醍醐寺の三宝院満済は、細川持元に寺を守るための要請をし、幕府の指導者たちもこの騒動に対応を迫られる状況となったのです。8月から9月にかけて、近江から波及した一揆は全国各地へ広がり、酒屋や土倉を襲う私徳政が行われました。この状況に対して、室町幕府は一揆の制圧に乗り出しましたが、一揆の勢いは収まることなく、9月には京都市中にまで波及しました。

経過

特に注目すべきは、11月2日に近江の馬借が下京に攻め入ったことです。この動きに続き、京都以外でも大和や河内、播磨国での一揆が相次ぎました。各地で一揆勢は私徳政を行い、借金を破棄する動きが活発化しました。奈良では、興福寺や東大寺が協議を行った結果、興福寺は7つの規定を盛り込んだ「徳政条法」を発表しました。これは、人々の借金問題を軽減するための試みでしたが、すぐに一揆勢との衝突を避ける手段として機能しました。

播磨国では、11月6日に起こった一揆が地域全体に広がり、夕方の段階でその猛威は頂点に達しました。しかし、幕府の強硬な方針により、次第に一揆の動きは収束していきました。最終的には、一揆勢が求めた徳政令は幕府から正式に出されることはありませんでしたが、土倉が保持していた借金の証文が破棄され、実質的な徳政が実現しました。

幕府の対応とその後

室町幕府は、一揆勢に対して強硬姿勢を取り、土一揆への参戦を禁じる一方で、参加者を厳しく取り締まる措置を講じました。赤松満祐がこの取り締まりを強化したことで、土一揆の影響を受ける地域では一時的な沈静化が見られましたが、参加者たちの基本的な不満は解消されませんでした。正長の土一揆は、日本における初の徳政一揆として、後の歴史に大きな影響を与えることになったのです。次なる一揆への道を切り開いたこの出来事は、民衆の抵抗運動の一つの象徴として、後の日本史に名を刻みました。

まとめ

正長の土一揆は、様々な社会的要因と経済的不安が絡み合った結果、民衆が立ち上がるという歴史的な出来事でした。その背景にある飢饉や代替わりの影響、さらには各地での私徳政の波及が、一揆を押し進めたのです。この一揆は、民衆の声がいかにして権力に対抗する力を持ち得るのかを示す重要な教訓を残しました。

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