武田幾丸

武田幾丸（生没年不詳）は、幕末から明治初期にかけて活躍した浮世絵師であり、落合芳幾の門人として知られています。一交斎、松花楼という号を用いて作品を発表しました。

作画期は慶応年間から明治時代にかけてであり、風俗画や開化絵といったジャンルで才能を発揮しました。当時の世相や風俗、文明開化の様子を鮮やかに描き出し、時代の変遷を伝える貴重な作品を数多く残しています。

現存する作品としては、以下のようなものが挙げられます。

「新版猫の女郎屋」：慶応頃に制作された大判錦絵。擬人化された猫たちが遊郭で繰り広げる様子をユーモラスに描いています。
「東京築地ホテル館図」：明治元年に制作された大判錦絵3枚続。築地に建てられたホテル館の壮麗な外観を捉えています。西洋建築の導入という時代の変化を象徴する作品です。
「横浜海岸外国館煉瓦造図」：明治5年に制作された大判錦絵3枚続。横浜の海岸に立ち並ぶ外国館の煉瓦造りの様子を詳細に描いています。異国情緒あふれる風景が魅力です。
「東京海運橋兜街三井組為換座西洋形五階造」：明治6年に制作された大判錦絵3枚続。海運橋兜町に建てられた三井組の為換座（両替店）の西洋風建築を描いています。五階建ての建物は、当時の東京においても非常に珍しいものでした。

これらの作品は、当時の社会情勢や文化、人々の生活を知る上で貴重な資料となっています。武田幾丸の作品は、浮世絵を通じて、幕末から明治へと移り変わる激動の時代を鮮やかに映し出していると言えるでしょう。

参考文献：

* 日本浮世絵協会編　『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）　大修館書店、1982年 ※12頁

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