死戦期呼吸

死戦期呼吸とは

死戦期呼吸（しせんきこきゅう、agonal respiration）は、心停止の直後に見られる特徴的な呼吸パターンであり、一般的には「ギャスピング」とも呼ばれています。この状態は、呼吸中枢による正常な呼吸調節が機能していないことを示しており、患者の身体は十分に酸素化されていない可能性が高いです。

特徴

死戦期呼吸は通常の呼吸とは異なり、胸が動かず顎が上下する動作だけが見受けられるのが特徴です。これは、肺が機能していないか、ほとんど機能していないことを意味します。そのため、もし患者がこのような呼吸をしている場合は、実質的に呼吸をしていないと考え、緊急の処置を行う必要があります。しかし、この呼吸パターンは医療の専門家でない人には見分けるのが難しいため、一般の人々が誤って患者の呼吸が正常であると判断してしまうことがあるのです。

死戦期呼吸の種類

死戦期呼吸にはいくつかの種類があります。

1. 下顎呼吸

吸気の際に下顎を動かし、空気を吸い込もうとする動作を伴いますが、胸郭はほとんど動きません。これが見られる場合、実際には肺への空気の取り込みが不十分である可能性があります。

2. 鼻翼呼吸

吸気時に鼻翼が広がり、呼気時にはその鼻翼が縮む呼吸の仕方です。こちらも胸郭の動きがほとんどなく、不十分な呼吸が行われています。

3. あえぎ呼吸

この呼吸は、数回の深い吸息と速い呼息が続いた後に無呼吸に至る呼吸パターンです。あえぎ呼吸も呼吸が停止している状況にすぐつながる危険性があります。

処置と応急対応

死戦期呼吸が見られる場合は通常の呼吸していない状態と見なして、迅速に処置を行う必要があります。これには、迅速な胸骨圧迫（いわゆる心臓マッサージ）、人工[[呼吸]]、さらに必要に応じてAED（自動体外式除細動器）の使用が含まれます。これらの行動が、人命を救うために極めて重要です。

死戦期呼吸が見られるメカニズム

正常な身体の循環系では、呼吸中枢が動脈血中の酸素分圧と二酸化炭素分圧を調整しています。心停止により、末梢組織への酸素供給が遮断され、代謝による二酸化炭素の供給も止まります。その結果、動脈血中の二酸化炭素分圧が低下し、最終的には低酸素状態に反応した末梢性化学受容器が呼吸中枢に信号を送ることになります。しかし、この過程の後、身体の機能が十分でないため、実際には有効な呼吸が行われていないのです。

この状態を迅速に認識し、適切な処置に移ることが、救命活動において肝要です。心停止が発生した場合には、直ちに専門家に連絡し、助けを求めることが何よりも重要です。

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