海がきこえる

海がきこえる

『海がきこえる』は、氷室冴子による日本の小説であり、それを原作としたスタジオジブリ制作のアニメ映画、そしてテレビドラマとしても展開された人気作品です。ここでは、原作小説とその続編『海がきこえるII〜アイがあるから〜』について解説します。

概要

『海がきこえる』は、徳間書店の雑誌『月刊アニメージュ』に連載された小説で、高知を舞台に、地元の男子高校生と東京からの転校生である女子高校生との青春模様を描いています。スタジオジブリの映画『魔女の宅急便』のキャラクターデザインを担当した近藤勝也が挿絵を手掛けたことでも話題となりました。

連載のきっかけは、『アニメージュ』編集部が「アニメ絡みでない、メジャーな作家の作品を載せたい」と考えたことでした。編集者は、当時ミリオンセラーを連発していた氷室冴子に白羽の矢を立て、ジブリでの映像化を目論んだのです。氷室は当時ほぼ集英社の専属状態でしたが、ジブリを交渉材料に連載を実現させました。作品の舞台が高知になったのは、氷室が高知の図書館司書との交流があり、高知を舞台にした小説を書きたいと考えていたためです。

作中の土佐弁は、氷室が標準語で書いたものを地元の人間に土佐弁にしてもらい、それを高知以外の人にも通じるように修正したもので、正確な土佐弁ではありません。アニメ版も同様の土佐弁が使用されています。

1993年に単行本化された際、作者によって一部エピソードが省かれるなどの編集が加えられ、連載時とは異なる構成となっています。同年には、近藤勝也のキャラクターデザインによるスタジオジブリのテレビアニメが制作されました。

続編

1995年には、続編となる『海がきこえるII〜アイがあるから〜』が書き下ろし単行本として出版されました。引き続き、近藤勝也が挿絵を担当しています。同年には、武田真治主演で主に同作品をベースにしたテレビドラマが制作されました。

1999年には、『海がきこえる』『海がきこえるII〜アイがあるから〜』が共に文庫本化され、それぞれ宮台真司と岡田惠和が解説を執筆しています。

あらすじ

海がきこえる

高知の高校を卒業した杜崎拓は、東京の大学に進学。ある日、同郷の友人から武藤里伽子が東京の大学に通っていることを知らされます。里伽子は、拓の高校時代の同級生で、親友の松野が片思いしていた相手でした。拓は、2年前の高校2年の夏、里伽子との出会いを思い出します。家庭の事情で東京から転校してきた里伽子との、ハワイへの修学旅行での出来事が、二人の関係を大きく変えていきます。

海がきこえるII〜アイがあるから〜

大学1年の夏、杜崎拓は高知に帰省し、クラス会で里伽子と再会します。東京に戻った拓の部屋には、年上の女性、津村知沙が入り込んでいました。不倫の恋に傷ついた知沙と、離婚した父とその再婚相手との間で傷つく里伽子。拓は、2人の女性に翻弄されながら、東京で初めての冬を迎えます。

登場人物

杜崎 拓（もりさき たく）
主人公。東京の大学に進学し、石神井公園付近のアパートに下宿しています。
武藤 里伽子（むとう りかこ）
ヒロイン。東京から高知に転校してきた美少女。高校卒業後、東京の女子大に進学します。
松野 豊（まつの ゆたか）
拓の親友で、里伽子に恋心を抱いています。高校卒業後、京都の大学に進学します。
小浜 裕実（こはま ゆみ）
里伽子の友人。高校卒業後、神戸の女子大に進学します。
山尾 忠志（やまお ただし）
拓の同級生で、「アサシオ」という綽名で呼ばれています。裕実に恋心を抱いています。
津村 知沙（つむら ちさ）
拓の大学の先輩。不倫に苦しんでいます。

テレビドラマ

1995年には、武田真治主演でテレビドラマ『海がきこえる〜アイがあるから〜』が放映されました。このドラマは、主に『海がきこえるII〜アイがあるから〜』をベースに、大学進学後の物語が描かれています。里伽子役は、ホリプロタレントスカウトキャラバンで選ばれた佐藤仁美が演じました。

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