瀬戸方久

瀬戸 方久（せと ほうきゅう）

瀬戸方久は、戦国時代に名を馳せた商人であり武将でもあります。彼は遠江国引佐郡の瀬戸村に住んでおり、地元の郷士として知られていました。彼の家族は昔、村の名主を務めていた松井平兵衛であり、その名を地名からとって「瀬戸」と名乗るようになりました。方久は、領主である井伊氏の庇護を受けながら、商才を武器に豪商に成長を遂げたと言われています。

永禄9年（1566年）に、井伊直虎が渋川村の福満寺に梵鐘を建立する際、方久はその資金を提供し、「瀬戸四郎右衛門」として願主として名を連ねました。彼の商業的な才能はこのように宗教的な場面でも発揮されていました。また同年、今川氏真が井伊谷や瀬戸に徳政令を発布する事態が発生しましたが、井伊氏はこの命令に対して抵抗し、結局徳政令の施行は2年後の永禄11年（1568年）に実行されることになりました。

方久は、この徳政令が実施されるまでの期間、今川氏真との関係を深め、自身の利益を追求しました。彼は刑部城と堀川城のための軍資調達を請け負う代わりに、自身が持つ田や屋敷を徳政令の対象外とする安堵状を得ています。このような巧妙な交渉によって、方久は安定した地位を築くことに成功しました。

永禄10年（1567年）10月には、今川氏から買得地の安堵を受け、その地位をさらに強固なものとしました。さらに、永禄11年（1568年）9月に井伊谷領全体を対象にした徳政について訴訟が起こったときも、方久の買得地は今川氏から免除されるとされました。このように、方久は自身の商業的手腕を生かして生き抜いていったのです。

彼の業績は、多くの文献に取り上げられ、その生涯は後世にわたって語り継がれています。特に、NHKのドラマ「おんな城主 直虎」では、彼の存在が描かれたこともあります。この作品では、俳優ムロツヨシが方久を演じ、彼の商才や戦国時代における巧妙な立ち回りが観客に印象づけられました。

家族背景を含めた彼のストーリーは、今も多くの研究者によって調査され続けており、様々な資料が残されています。特に、静岡県引佐郡教育会が編纂した『静岡県引佐郡誌』や、楠戸義昭の著作『女城主・井伊直虎』をはじめ、井村修の『井伊氏と家老小野一族』、鈴木将典の『国衆の戦国史』など、多くの資料が方久の生涯や商才を記録しています。

このように、瀬戸方久は戦国時代の商人として、また武将としてもその存在感を示し、地域の歴史に深く根ざした人物であったと言えるでしょう。

もう一度検索