炎症

炎症の概要

炎症（えんしょう、英: Inflammation）は、生体に対するさまざまな刺激や侵襲によって引き起こされる局所的な反応です。微生物感染、物理的刺激、化学的ストレスなどが主な原因となります。炎症が起こると、特定のサインとして発熱、発赤、腫れ、痛みが見られ、これらを総称して炎症の4徴候（ケルススの4徴候）と呼びます。さらに、機能障害も伴うことがあり、これを炎症の5徴候（ガレノスの5徴候）としています。歴史的には、紀元前3000年頃の古代エジプトの文献にも炎症に関する記録が残っており、1793年にはスコットランドの外科医ジョン・ハンターが炎症を「病気ではなく非特異的な反応」と定義しました。炎症は自己防御の一環として重要な役割を果たしています。

炎症の徴候

炎症には以下の4つの主要な徴候があります：

1. 発赤 (Rubor): 血管が拡張し、局所的な血液量が増加することで、患部が赤くなります。
2. 熱感 (Calor): 血流の増加により、患部が熱を持ちます。これは、発熱物質がマクロファージや白血球によって生成されることによって引き起こされます。
3. 腫脹 (Tumor): 血管の透過性が亢進し、炎症性水腫が発生して患部が腫れます。これにより、物質交換が活発になります。
4. 疼痛 (Dolor): 血流の増加と浮腫により、組織圧が高まり、痛みを感じます。炎症部位に集まる食細胞から放出される物質が痛み感覚を引き起こします。

さらに、これらの徴候に加えて、機能障害も起こることがあり、これは炎症の影響によるものです。

炎症の原因

炎症を引き起こす原因は、広範にわたります。具体的には、微生物（細菌、ウイルス、真菌など）、物理的な損傷（外的な衝撃、温度変化など）、化学的刺激（酸や重金属）があります。炎症を引き起こす物質には、外因（身体の外部から侵入するもの）と内因（体内で生成されるもの）があり、これらが炎症反応を引き起こします。

炎症の種類

炎症はその経過に応じて、急性炎症と慢性炎症に大別されます。急性炎症は短期間で早期に解消される反応ですが、慢性炎症は長期にわたる炎症の状態を指し、持続する症状や組織障害が特徴です。慢性炎症は数ヶ月から数年にわたり、さまざまな病気の原因ともなることがあります。

急性炎症

急性炎症は、生体が外的な刺激を受けた際に即座に反応を示すもので、細胞や組織の損傷が引き金となることが多いです。急性炎症の過程では、微小循環が活発化し、血流が増加し、白血球が炎症部位に集まります。また、壊死した細胞は貪食されたり、血管透過性が亢進することで腫れが生じることもあります。急性炎症の結果として、完全治癒、不完全治癒、慢性炎症への移行が起こることがあります。具体的には、病原体の排除や組織の修復が行われ、元の状態に戻ることが期待されます。

慢性炎症

一方、慢性炎症は急性炎症の症状が継続して見られる状態であり、特に注意が必要です。この状態は、病原体が残存していることから発展し、多くの慢性疾患に関連しています。心血管疾患や糖尿病、がん、さらには認知症などがその例です。慢性炎症は多くの場合、生活習慣や食事の影響も受けるため、適切な対策や治療が求められます。

結論

炎症は、私たちの体が外的刺激に応答する際に重要な役割を果たしますが、急性と慢性の両方のタイプが存在し、適切な理解と管理が必要です。炎症のメカニズムを知ることで、より良い健康を維持し、慢性的な疾患のリスクを低減することが可能となります。

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