無名異焼

無名異焼（むみょういやき）は、新潟県佐渡市で焼かれる陶器です。

概要

無名異焼は、酸化鉄を豊富に含む赤土、無名異土を主な原料としています。その起源は1819年（文政2年）に遡り、伊藤甚平が佐渡金山の坑内で産出される無名異を用いて楽焼を製造したのが始まりとされています。その後、1857年（安政4年）には伊藤富太郎が本焼を開始し、明治時代に入ると、三浦常山や伊藤赤水といった陶芸家たちの手によって、高温で硬質に焼成する現在の無名異焼の形が確立されました。

特徴

無名異焼の技術的な特徴として、水簸と呼ばれる水を使った土の精製作業が挙げられます。さらに、精製された土を絹目に通すことで、他の陶土よりも粒子が細かく、収縮率が大きくなる性質を持っています。成形後には、まだ生の状態で石や鉄製のヘラなどで表面を磨き、独特の光沢を出します。焼成後には、佐渡金山の精錬滓でさらに磨きをかけることで、深みのある光沢を生み出します。

完成した焼物は非常に硬く焼き締まっており、叩くと金属のような音を発するのが特徴です。その色合いは、使い込むほどに光沢が増し、独特の落ち着いた色味へと変化します。

無名異焼は、佐渡で産出する陶土と釉薬原料を使用することが原則とされていますが、技術の進歩や陶工たちの長年の工夫により、近年では釉薬原料や造形が多様化し、窯元ごとに異なる特徴を持つ製品が作られるようになりました。

文化財としての価値

2003年には重要無形文化財の指定を受け、同時に5代伊藤赤水が重要無形文化財保持者（人間国宝）に認定されました。これは、無名異焼の技術と芸術性が高く評価された結果と言えるでしょう。

2024年10月17日には、経済産業大臣指定伝統的工芸品の指定を受け、その価値はさらに高まっています。

石見無名異焼

島根県の石見銀山産の鉱物「無名異」を原料に、陶工の肥田泰山が1906年（明治39年）頃から1943年（昭和18年）にかけて製造した焼物も「無名異焼」と呼ばれています。しかし、現存数が非常に少なく、幻の焼物とも称されています。石見銀山の山中より採取した無名異を水でこし、粘土を混ぜて練って成形し、時には彫刻を施して焼き上げられました。表面は無釉で堅く、褐色を帯びた赤色をしているのが特徴です。

無名異焼は、佐渡の豊かな自然と歴史、そして陶工たちの情熱が息づく、他に類を見ない уникальный 陶器です。

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