無酸素銅

無酸素銅（OFC）とは、一般的に酸化物含有量を極めて低く抑えた、純度99.96%以上の高純度銅を指します。これは、日本工業規格（JIS）においても、無酸素銅（JIS H 3100, C1020）および電子管用無酸素銅（JIS H 3510, C1011）としてその規格が定められています。特徴的なのは、残存酸素量が10ppm（0.001%）以下という極めて低い値に抑えられている点です。この低酸素含有率により、高温下でも水素脆化を起こしにくい性質を持ちます。

通常のタフピッチ銅（純度99.90%程度）と比較すると、無酸素銅は電気抵抗や歪みが少なく、工業的に優れた特性を示します。さらに、ガス放出量が少ないため、真空機器のガスケットなどにも広く利用されています。ただし、タフピッチ銅と同様に、大気中では表面が酸化するという性質も持ち合わせています。

音響機器における無酸素銅

音響機器の分野では、無酸素銅製の信号ケーブルは特にOFCケーブルと呼ばれ、音源（レコードプレーヤー、CDプレーヤー、アンプ、楽器、マイクロフォンなど）、録音・編集機器（ミキシングコンソール、エフェクター、DAT、PC専用USB接続オーディオキャプチャーインターフェースなど）、出力機器（スピーカー、ヘッドフォンなど）といった、オーディオ信号の伝送に関わる様々な機器の接続に不可欠な存在です。

さらに、純度を高めたハイクラス無酸素銅（主に99.9999%（6N）以上）を使用したケーブルも存在し、これらは非常に高価で、数万円から数十万円に及ぶものもあります。このような高純度無酸素銅ケーブルは、よりクリアで歪みの少ない音質を求めるオーディオ愛好家から支持されています。

1970年代には、すでに無酸素銅の音響特性に関する研究が行われていました。有名な電線会社の技師長が、無酸素銅線による音質変化の可能性について実験を行ったという記録も残っています。

関連用語

タフピッチ[銅]: 一般的な電気導体材料として広く使用される銅で、酸素含有量がやや多い。無酸素銅に比べると電気抵抗が高く、高温下での水素脆化のリスクがある。
ハイクラス無酸素[銅]: 純度99.9999%（6N）以上の特に純度を高めた無酸素銅。高音質を求めるオーディオ機器に用いられる。
線形結晶無酸素[銅]: 結晶構造を一定方向に揃えることで、電気伝導性を高めた無酸素銅。
単結晶状高純度無酸素[銅]: 結晶構造を大きく単結晶状にすることで、電気抵抗を低減した無酸素銅。信号伝送のロスを極限まで抑えることができるとされる。

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