熊取町立熊取図書館

熊取町立熊取図書館：地域に開かれた知の拠点

1994年、大阪府泉南郡熊取町に開館した熊取町立熊取図書館は、地域住民にとってかけがえのない存在です。美しい景観と充実した蔵書、そして活気ある利用状況は、その評価の高さを物語っています。この図書館は、単なる蔵書保管施設ではなく、地域住民の学習や交流の場として重要な役割を果たしているのです。

設計と建築：自然と調和した空間

熊取町立熊取図書館の設計は鬼頭梓氏、施工は清水建設が担当しました。斜面を利用した独特の設計は、地下に倉庫、地上に利用者空間を配置するという合理的な設計となっています。開放的でシンプルな空間は、周囲の緑豊かな自然環境とも見事に調和しています。この優れた建築デザインは高く評価され、第16回大阪都市景観建築賞大阪府知事賞を受賞しました。建物の内外装は、利用者の利便性と快適性を追求した設計となっており、誰でも気軽に利用できるよう配慮が行き届いています。

図書館の現状：活気あふれる利用状況

2020年度のデータによると、熊取町立熊取図書館の蔵書数は375,325冊、貸出数は319,084冊、来館者数は111,912人に上ります。年間の運営費は1億1522万1千円です。これらの数字は、図書館が地域住民からどれほど利用されているかを示す、明確な指標と言えるでしょう。年齢層も幅広く、子どもから高齢者まで、多くの人がこの図書館を訪れ、読書や学習、情報収集などに活用しています。

相互貸借制度をめぐる訴訟：図書館の役割を問う事件

熊取町立熊取図書館は、2007年、図書館間相互貸借制度をめぐる住民との訴訟で注目を集めました。住民は、図書館の除籍冊数が多いため、予算の無駄遣いではないかと考え、除籍リストに掲載されている図書の相互貸借を申請しました。しかし、図書館側は業務に支障が出るとしてこれを拒否したことが訴訟のきっかけとなりました。

第一審の大阪地方裁判所は、図書館が公の施設であり、相互貸借は図書館長の自由裁量ではなく、図書館法その他の法令に基づくべきであると判断。図書館側の拒否は人格的利益の侵害に当たるとして、図書館側に5万円の支払いを命じました。熊取町は控訴しましたが、大阪高等裁判所において和解が成立し、裁判は終結しました。この訴訟は、図書館の役割や運営、そして情報へのアクセス権といった重要な問題点を浮き彫りにしました。

今後の展望：地域社会に貢献し続ける図書館

熊取町立熊取図書館は、訴訟を経験したことを教訓に、さらに利用者にとってより良い図書館を目指して、運営改善に取り組んでいます。情報アクセスの向上、蔵書内容の充実、そして地域住民との連携強化など、様々な課題に取り組むことで、これからも地域社会に貢献し続けるでしょう。開館時間、休館日、交通アクセスなどの情報も公開することで、より多くの住民が利用しやすい環境づくりを推進しています。

参考文献

* 福井佑介「熊取町立熊取図書館相互貸借拒否事件判決の意義と相互貸借制度に関する考察」『図書館界』第62巻第5号、日本図書館研究会、2011年1月、334-347頁、doi:10.20628/toshokankai.62.5_334。

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