燃料気化爆弾

燃料気化爆弾（FAEB）の解説

燃料気化爆弾（Fuel-Air Explosive Bomb, FAEB）は、その特異な機能と破壊力から、近代兵器の中でも注目されている兵器の一つです。一般的には「気化爆弾」とも呼ばれ、特にサーモバリック爆弾として知られることが多いですが、その背景や機能についてはあまり知られていません。

発展の歴史

この気化爆弾の開発は、第二次世界大戦中のドイツに遡ります。当時、ナチス・ドイツは石炭粉と液体酸素を用いた実験的な型を試作し、クリミアやワルシャワの都市戦で限定的に使用されました。しかし、ドイツの敗戦によりその研究は中断されました。

その後、アメリカとソビエト連邦がこの技術を引き継ぎ、1980年代には正式に実用化が発表されるまでに至ります。FAEBの特異な点は、爆薬の代わりに酸化エチレンや酸化プロピレンなどの燃料を使用し、BLEVEと呼ばれる現象を利用して空中に散布することです。これにより、秒速2000mという驚異的な速度での拡散が可能になります。

機能と性質

燃料気化爆弾は、一定の高度に達すると信管が作動し、RDXといった一次爆薬が起爆します。これにより、液体燃料が加圧沸騰し、高温高圧の状態を維持します。その後、圧力が上限に達した瞬間に放出弁が開き、液体燃料が急速に蒸発して蒸気雲が形成されます。この時点で着火が行われ、自由空間蒸気雲爆発が発生します。

この爆発は、マスコミなどでよく報じられる都市ガス事故のガス爆発に似ており、衝撃波を発生させ、最大12気圧に達する圧力を生み出します。その結果、2800℃にもなる高温が生成され、加害半径は数百メートルに達するため、多大な被害をもたらすことが知られています。

一方、この兵器は直接的な破片による損傷が少ないものの、気圧の急激な変化によって内臓破裂などの致命的な傷害を引き起こすことがあります。また、燃料の燃焼により酸素が消費され、窒息死の危険も伴います。

使用例

燃料気化爆弾は特に湾岸戦争においてその真価が発揮され、多くのイラク軍部隊に対して使用されました。報告によると、この兵器により多数の兵士が火球や衝撃波によって死亡したり、窒息したりしました。具体的には、衝撃波の後に発生する真空状態が肺を破裂させるなどの独特な傷害を引き起こすことが確認されています。

誤解の清浄

時にマスコミでは、燃料気化爆弾とデイジーカッターが混同されることがありますが、これらは異なる兵器です。デイジーカッターは通常の爆薬を用いており、利用される攻撃のメカニズムが異なります。前者は強力な爆風を用い、後者は破片による直接的な攻撃を行います。

結論

燃料気化爆弾はその特異な破壊メカニズムと強力な衝撃波によって、近代戦において重要な位置を占めています。爆薬からは得られない独特の威力を持つこの兵器が、今後もどのように使用されていくかは、国際的な武器使用の観点からも注目すべき点です。

もう一度検索