燃油サーチャージ

燃油サーチャージについて

燃油サーチャージ（ねんゆサーチャージ）は、石油を燃料とする際に発生するコストの変動に対応するために、運賃に上乗せされる料金のことを指します。この制度は、1970年代に海運業界で導入され、その後2000年代に入ると航空業界や陸運業界にも広がりました。具体的には、燃料費が急激に変動する場合に、契約時や料金設定時の運賃だけでは運航を維持できない場合に導入される措置です。ここでは、航空、海運、陸運それぞれの分野における燃油サーチャージの概要とその運用状況を解説します。

航空業界における燃油サーチャージ

航空業界での燃油サーチャージは、1997年に国際航空運送協会の認可を受けて導入されて以来、2001年から実際の運賃に追加される形で適用されています。一般的には、ケロシンタイプジェット燃料の市場価格を基準としています。具体的には、北米ではガルフコースト、アジアではシンガポール、ヨーロッパではロッテルダムの価格が参照されます。

この料金は、航空会社が荷主や搭乗客に請求する形で徴収されることが多く、一部の運送会社では小口貨物にも適用されることがあります。日本の航空会社は、必要に応じて運賃に燃油サーチャージを上乗せしており、特に国際便においては政府の認可が必要です。航空業界では、このサーチャージの導入によって収益を維持しようとしていますが、油価の急騰や円安の影響も受けており、乗客数の減少につながることもあります。

海運業界における燃油サーチャージ

海運業界では、1975年ごろから燃油サーチャージが導入されました。この制度は第一次オイルショックを受けて策定されたもので、BAF（Bunker Adjustment Factor）やBS（Bunker Surcharge）などの名称が付けられています。外航海運では、海運同盟が指標価格を設定していますが、基本的には船主と荷主の合意によって金額が決定されます。

日本では、一般旅客運賃について届出が必要で、燃料油価格の変動に対応することが求められています。クルーズ業界においても、燃油サーチャージは適用されることが多く、特にニューヨークマーカンタイル取引所のWTIアメリカ標準油種を基準にすることが広く見られます。燃油価格の下落により、多くのクルーズ会社ではサーチャージの廃止が続いています。

陸運業界における燃油サーチャージ

陸運業界においても、湾岸戦争以降の原油価格高騰に対する措置として燃油サーチャージが導入されています。日本では2008年に国土交通省が「トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン」を策定し、軽油価格を基準にした運送コストの転嫁を促進しています。

カナダやアメリカなどでも、燃油価格に連動した割増料金が設定されています。日本国内では、大手運送会社がサーチャージを導入する一方で、中小業者にはその実施が難しい現状が続いており、運送業者の収益に影響を与えています。

燃油サーチャージに関する問題

燃油サーチャージの導入については、様々な面で問題が生じています。特に、航空業界では2008年の原油高騰の時期にサーチャージが大幅に上昇した結果、利用者の不満が高まりました。また、陸運業界でも燃料コストを適切に転嫁できない中小運送業者が多く存在し、経営に影響を与えています。

国土交通省は旅行業界に対し、燃油サーチャージを含んだ総額表示を求める指導を行うなど、透明性の確保を図っています。このように、燃油サーチャージは各運輸業界における重要な調整手段であると同時に、様々な課題にも直面しているのです。

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