猪熊弦一郎

猪熊弦一郎の生涯と業績



猪熊弦一郎(いのくま げんいちろう)は、1902年12月14日香川県高松市に生まれ、後に丸亀市へ移住しました。彼の幼少期からの絵画への情熱は、学校の授業で教師の代わりをするほどの才能を示していました。1921年に旧制丸亀中学校を卒業し、次いで1922年に東京美術学校へ入学し、著名な洋画家藤島武二に師事しましたが、数年後に中退しました。

初期のキャリア



1926年、猪熊は「婦人像」を発表し、帝展に初入選します。その後、「座像」で特選に選ばれたことにより、彼は帝展無鑑査の地位を得ることになります。1936年には、同じような画風を持つ小磯良平、脇田和らと共に新制作派協会を設立し、彼の画業は新たな展開を迎えます。

フランス留学と画風の模索



1938年、猪熊はフランスに渡り、強い影響を受けることになります。特に、著名な画家アンリ・マティスの指導を受け、自身の絵の批評を求めた際に「お前の絵はうますぎる」と言われ、自らのスタイルが確立されていないと感じて愕然とします。彼はその後も自分の画風を模索し続けました。

1940年に第二次世界大戦が勃発し、帰国することを余儀なくされます。翌年、彼は中国、フィリピン、ビルマへの従軍を経て、戦争画の発表へとつながりました。

戦後の活動と評価



戦後は、田園調布で純粋美術研究室を立ち上げ、後進の指導に当たります。1950年には有名な三越の包装紙「華ひらく」のデザインを行い、その際の報酬も話題となりました。1951年には、上野駅に壁画「自由」を完成させ、さらには名古屋や慶應義塾大学の作品で第2回毎日美術賞を受賞します。

国際的な評価の中で



1955年、猪熊は拠点をニューヨークに移し、ここから彼の画風は抽象へと変化していきました。この時期、彼は多くの著名なアーティストたちと知り合う機会を得、彼らとの交流が彼の作品に新たな視点をもたらします。1973年に脳血栓で倒れた後、1980年には勲三等瑞宝章を受章し、1991年には丸亀市名誉市民の称号を得ます。

最期と遺産



猪熊は1993年に90歳で逝去し、彼の作品は現在も多くの人々に親しまれています。特に、丸亀市に設立された猪熊弦一郎現代美術館は、彼の多くの作品が常設展示されており、訪れる人々に彼の画業を伝えています。また、香川県庁舎の壁画も彼の作品であり、彼の芸術は地元に深く根付いた存在となっています。

このように、猪熊弦一郎は日本の現代美術の発展に多大な影響を与えた画家であり、彼の挑戦し続ける姿勢は、今後も多くのアーティストにインスピレーションを与えることでしょう。

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