猫伝染性腹膜炎

猫伝染性腹膜炎 (FIP) の概要

猫伝染性腹膜炎（FIP：feline infectious peritonitis）は、猫コロナウイルスの変異体である猫伝染性腹膜炎ウイルス（FIPV）が原因となる重篤な疾患です。このウイルスは猫に特有であり、人間には感染しません。FIPVは日本国内において猫腸コロナウイルス（FeCV）が突然変異を起こすことで発生すると考えられていますが、感染した猫から他の猫に直接感染することはないとされています。

原因

FIPの原因となるFIPVはコロナウイルス科に属し、感染した猫の腸内で繁殖するウイルスよりも悪性度が高いため、特に症状の重い病気を引き起こします。ほとんどの猫はFeCVに感染しており、その80％以上がかかっていると言われていますが、FIPVとして発症するのはごく一部です。感染の機会は糞便を介して行われ、特に若い猫がかかりやすい傾向があります。

疫学

FIPの疫学的な特徴として、特に生後6か月以下の子猫に多く見られることがあります。感染が広まる主な方法は経口感染であり、猫の体内で変異した感染力の高いウイルスが原因となります。全世界でこのウイルスは広く分布しているため、どこでも注意が必要です。

症状

感染後の初期段階では、発熱や食欲不振、嘔吐、下痢、体重減少といった非特異的な症状が見られます。この後、進行は二つのタイプに分かれ、滲出型（ウェットタイプ）と非滲出型（ドライタイプ）に分類されます。滲出型では、腹水の蓄積や胸水が原因で呼吸困難を引き起こすことがあります。一方、非滲出型では、目に影響が出たり、神経症状、腎腫大などのさまざまな症状が現れます。

診断

FIPの診断には、いくつかの方法が使用されますが、猫胎子株化細胞を使用したウイルスの分離やRT-PCR、蛍光抗体法などが一般的です。ただし、これらの診断手段では腸コロナウイルスとの完全な区別が難しいため、慎重な判断が求められます。

治療

FIPに対する有効な治療法は長らく存在しませんでしたが、近年いくつかの薬が開発されつつあります。特に乾性型のFIPにおいてポリプレニル（PI）が有望視され、症状の緩和や延命に役立つ可能性が示されています。また、湿性型にはgc376という新しい薬が効果的で、完治が期待できますが、治験薬であり、国内ではその治療を行っている動物病院は少なく、費用も高いため飼い主には大きな負担が伴います。

予防

日本では、現在、生ワクチンの使用はされていませんが、アメリカでは開発されています。猫の免疫力を強化するためには、快適な生活環境を提供することがとても重要です。特に、多頭飼いや他の感染症にかかっている場合には、細心の注意が必要です。

まとめ

猫伝染性腹膜炎（FIP）は、その発症メカニズムや症状から、特に若い猫の飼い主にとって問題となる疾患です。早期に病気を見つけ、適切なアプローチを取ることが重要です。

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