猫又

猫又の伝承

猫又（ねこまた）は、日本の民間伝承や古典文学に登場するネコの妖怪であり、さまざまな姿や役割を持っています。この妖怪は一般的に、年老いた猫が変化したものや、山中に潜む獣として描かれることが多いです。猫又の存在は、信じられないほどの神秘性と不気味さを帯びており、特にその由来や性質については多くの憶測がなされています。

山中の猫又

日本における猫又の最初の記録は、鎌倉時代にさかのぼります。藤原定家による『明月記』において、南都で「猫胯」が数人を食い殺したという記述があります。この話は猫又が山中に潜む獣として語られていますが、目撃された猫又の姿は「目は猫のようで、体は大きな犬のよう」という独特の描写があり、これには異説も存在します。実際、当時の人々は狂犬病にかかった獣が人間を襲ったのではないかとも考えていました。

その後、『徒然草』でも猫又が人を食う存在として語られ、江戸時代にはさらに多くの伝承が生まれました。多くの怪談集には、山中に隠れた猫又が描かれており、次第にその姿は大型化していきました。1685年の文献では、紀伊国でイノシシほどの大きさの猫又が捕まったという話があります。こうした伝説は、地域名にも影響を与え、越中国（現在の富[[山県]]）や会津（現在の福島県）には、多くの猫又伝説が残っています。

人家のネコが化ける猫又

猫又のもう一つの側面として、飼われていたネコが年老いて化けるという伝承があります。鎌倉時代には、飼い猫が魔物の姿をとるという話も散見され、江戸時代に入ると、こうした伝説は広く知られるようになりました。人々は飼い続けると老猫が猫又になると信じ、長い年月ネコを飼うことを避ける風習が各地に生まれました。また、猫又の「又」は二又に分かれた尾を指すとも言われていますが、実際には古来から魔性の存在とされていたネコの象徴であるとも考えられています。

妖怪画や文化

江戸時代には、猫又が妖怪画の題材としても頻繁に描かれました。絵巻物の中には、三味線を奏でる女性の姿をした猫又が描かれているものもあります。三味線の素材にネコの皮が使われることから、この猫又は同族を哀れむ歌を歌っていると解釈されることが多いです。さらに、猫又の性質に関する諸説は多岐にわたり、死者や亡霊に関連する俗信も深く根付いています。

また、猫又は頻繁に化け猫と混同される存在ですが、両者はそれぞれ異なる特性を持っています。猫又は老化した猫が妖怪化するのに対し、化け猫は主に生前のネコが人間の姿に変わる存在として考えられています。

結論

猫又は、日本の民間伝承や文化に多大な影響を与えてきた妖怪であり、その存在は不思議で魅力的です。古くから伝わる物語は地域によって異なり、今もなお新たな解釈や表現が生まれています。猫またという妖怪が伝えるメッセージは、私たちがネコと共に生きる上での神秘と恐怖の象徴として、今後も語り継がれていくことでしょう。

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