甘平

甘平：愛媛発祥の高級柑橘

愛媛県で開発された「甘平（かんぺい）」は、高級柑橘として知られています。その上品な味わいと、栽培の難しさから、市場では高値で取引されることも少なくありません。本稿では、甘平の特徴から栽培状況、さらには海外での展開まで、多角的に解説します。

甘平の特徴

甘平は、マンダリン系の柑橘です。果実は扁平な形状で、大きさは約220グラムと、シラヌヒとほぼ同程度です。最大の特徴は、その食べやすさです。大玉でありながら果肉は柔らかく、皮も剥きやすく、皮ごと食べられる手軽さも魅力です。糖度は1月下旬には13度以上になり、クエン酸の含有量も低いため、非常にバランスの良い甘さと酸味を楽しめます。

品質の安定化を図るため、2016年度から「愛媛クイーンスプラッシュ」というブランドが設定され、基準を満たした高品質な甘平のみが市場に出回ります。その結果、1玉2000円という高級価格で取引されることも珍しくありません。

甘平の栽培

甘平は栽培が非常に難しい品種です。裂果（実割れ）やス上がりが発生しやすく、安定した生産が大きな課題となっています。その難しさから、令和元年の反収は6.6t/haと、愛媛果試第28号（紅まどんな）の15.1t/haと比較して4割強にとどまっています。

栽培面積は319haで、生産量は2,115tです。生産地は愛媛県北部から北西部にかけてが中心で、特に砥部町、松山市、今治市では全体の約56%を生産しています。これは、紅まどんなやせとかなどの他の柑橘類と同様の傾向が見られます。

海外での甘平

甘平は、日本国外でも栽培されています。韓国には2000年代初頭に種苗が流出し、「RED香（赤香）」の名称で栽培されています。2010年には栽培面積が37.8haでしたが、2021年には897ha、生産量16,995tにまで拡大しています。韓国では独自開発の品種が全体の3%に過ぎず、その品種改良に課題を感じている状況です。2023年には甘平と紅まどんなを交配した独自新品種を発表する予定とのことです。

中国では2013年に、韓国経由で中国農業科学院柑橘類研究所が重慶市に種苗を導入し、浙江省象山県などでも栽培されています。

甘平の開発の歴史

甘平は、1991年に愛媛県立果樹試験場において、「西之香」に「シラヌヒ」の花粉を交配することで開発されました。1997年に初結実し、その優れた品質から2007年に種苗登録されました。しかし、2014年のDNA鑑定により、ポンカンと西之香の自然交配であることが判明しました。花粉の媒介は自然もしくは昆虫によるものと推測されています。2017年に品種登録された佐賀果試35号（にじゅうまる）は、甘平と近縁種にあたります。

まとめ

甘平は、その高い品質と栽培の難しさから、高級柑橘として高い評価を受けています。愛媛県を代表するブランドとして、生産技術の向上と、安定供給が今後の課題となります。一方、韓国や中国などでの栽培拡大も進み、国際的な柑橘市場において重要な存在になりつつあります。今後、甘平がどのように発展していくのか、注目が集まります。

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