生物農薬

生物農薬の概要

生物農薬（せいぶつのうやく）は、農業における防除手段として活用される生物を指します。これには主に昆虫、線虫、及び菌類が含まれ、害虫の捕食や感染を通じて様々な農業上の問題に対処します。一般的に、これらは化学農薬とは異なり、生きた生物を用いるため、より安全で環境に優しい選択肢とされています。また、生物農薬は特に「天敵農薬」や「微生物農薬」といった形で利用されることが多く、その特性に応じたさまざまな作用機序を持っています。

生物農薬の種類とその作用

生物農薬は主に以下のような種類に分類されます。

1. 天敵農薬

天敵農薬は、特定の害虫に宿主を持つ生物を利用します。これにより、害虫の数を抑制します。

• - ハモグリコマユバチ（学名: Dacnusa sibirica）

これはマメハモグリバエに寄生する寄生蜂です。

• - ヤマトクサカゲロウ（学名: Chrysoperla carnea）

アブラムシを捕食する幼虫があります。

• - スワルスキーカブリダニ

ハダニやコナジラミを捕食する生物農薬です。

2. 病原菌

病原菌は、害虫に感染してその活動を抑制したり、最終的には死亡させたりする生物農薬です。

• - バーティシリウム・レカニ（学名: Verticillium lecanii）

アブラムシに感染し、死亡させる効果があります。

• - パスツーリア・ペネトランス（学名: Pasteuria penetrans）

こちらはネコブセンチュウに感染し、栄養を奪い、無力化させます。

3. 共生生物を持つ生物農薬

このタイプでは、線虫が持つ共生生物が害虫を攻撃します。

• - スタイナーネマ・カーポカプサエ（学名: Steinernema carpocapsae）

ゾウムシの幼虫を標的とします。

4. 抗菌物質を生産するもの

特定の病原菌に抗菌物質を産出し、植物を保護します。

• - アグロバクテリウム・ラジオバクター（学名: Agrobacterium radiobactor strain 84）

根頭がんしゅ病菌に対して効果があります。

5. 病原菌に対する拮抗作用を持つもの

生物農薬は、病原菌と栄養や住処で競合し、病原菌の活動を阻害します。

• - バチルス・ズブチリス（学名: Bacillus subtilis）

灰色カビ病菌に対して拮抗する働きがあります。

6. 雑草に対する病原菌

生物農薬が特定の雑草だけを攻撃し、除草を行います。

• - ザントモナス・キャンペストリス（学名: Xanthomonas campestris pv.poae）

スズメノカタビラに感染し、枯死させます。

7. キラー菌

特定の害虫に対して選択毒性を示し、効果があります。

• - バチルス・チューリンゲンシス（Bacillus thuringiensis）

鱗翅目、双翅目、鞘翅目に対する高い殺虫効果があります。

生物農薬と化学農薬の違い

生物農薬は化学農薬と比較していくつかの顕著な違いがあります。

• - 有効期限: 生物農薬は一般的に短めで、特に昆虫類のものはすぐに効果が失われます。
• - 併用制限: 化学農薬との併用が難しく、また、それぞれの散布間隔に注意が必要です。
• - 利用環境: 主に密閉されたビニールハウスなどで使用します。
• - 有機農業: 有機農業でも使用可能です。
• - 対象の広さ: 生物農薬は特定の害虫や病原菌、雑草にのみ効果があります。
• - 安全性: 環境への影響が少なく、人畜にも優しいです。ただし、一部の外来生物の影響には注意が必要です。
• - 抵抗性: 生化学農薬は、使用が繰り返されても抵抗性が生じにくいです。

生物農薬は、持続可能な農業を推進する上で重要な役割を果たし、自然の力を最大限に活用した防除システムの構築に寄与しています。

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