田中敬人

田中 敬人

田中 敬人（たなか ひろと）は、1979年8月26日に長崎県佐世保市で生まれた元プロ野球選手（投手）。現在は、島根県にある柿木温泉「日帰り温泉はとのゆ」の経営者として、野球界を離れた新たな人生を送っている。

アマチュア時代

別府大学附属高校では投手として活躍し、3年夏の全国高等学校野球選手権大分大会ではチームをベスト8に導いた。卒業後は東都大学野球リーグに所属する駒澤大学に進学。本格派右腕として将来を嘱望されたが、在学中は怪我に悩まされることが多く、思うような投球ができない時期も経験した。しかし、東都大学1部リーグでは通算8試合に登板し、1勝0敗、防御率2.10という安定した成績を残している。大学4年時には、第32回明治神宮野球大会でチームの抑え投手を務め、優勝に貢献した。

大学時代のチームメイトには、当時エースとして活躍した川岸強や、後にプロでバッテリーを組むことになる前田大輔がいる。また、同じくプロ入りした稲田直人とは社会人野球でもチームメイトとなった。1学年後輩の梵英心も、プロの世界で再び同僚として同じユニフォームを着ることになる。

大学卒業後、社会人野球の強豪であるJFE西日本に入社。ここでも主力投手の一人として活躍し、第31回社会人野球日本選手権大会では胴上げ投手となり、チームを優勝に導くなど、アマチュア時代を通じて輝かしい実績を重ねた。

プロ入りと広島時代

社会人での実績が評価され、2004年のプロ野球ドラフト会議において、広島東洋カープから8巡目で指名を受け入団。即戦力としての活躍が期待されたが、プロ入り後はアマチュア時代と同様に怪我や不調に苦しむ時間が長かった。一軍での登板機会は限られ、多くの時間をウエスタン・リーグ（二軍）で過ごすことになる。

プロ初登板は2005年5月11日の福岡ソフトバンクホークス戦（福岡Yahoo! JAPANドーム）。8回裏に5番手投手として救援登板し、1イニングを無失点に抑えた。この登板でプロ初奪三振も記録（相手は大村直之）。プロ初勝利は同年8月2日の読売ジャイアンツ戦（広島市民球場）で、11回表に8番手としてマウンドに上がり、1回を投げて1失点ながらチームのサヨナラ勝利により白星が転がり込んだ。しかし、初先発となった2006年9月10日の中日ドラゴンズ戦（広島市民球場）では、2回途中で降板し8失点を喫し、敗戦投手となるなど、プロの壁に苦しんだ。

プロでの背番号は、入団当初の2005年から2006年までは「19」を着用。2007年シーズンには「38」に変更された。同年10月5日、球団から戦力外通告を受け、現役プロ野球選手としてのキャリアを終えた。

引退後のキャリア

プロ野球を引退後、2008年からは古巣である広島東洋カープの球団職員として野球に携わる仕事を続けた。その後、野球界を離れ、島根県の柿木温泉にある「日帰り温泉はとのゆ」の主人（経営者）へと転身。プロ野球選手という特殊な世界から、温泉旅館の経営という全く異なる分野へと活動の場を移し、セカンドキャリアを築いている。アマチュア時代に輝きを放ち、プロでは苦闘の末に短い期間でユニフォームを脱いだが、現在は地域に根差した事業の担い手として、新たな形で社会に貢献している稀有な人物である。

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