発狂した宇宙

発狂した宇宙

概要

『発狂した宇宙』（英題：What Mad Universe）は、1949年にアメリカのSF作家フレドリック・ブラウンによって発表された長編SF小説です。この作品は、パラレルワールドのテーマを扱った古典であるだけでなく、当時のSF文化を巧みにパロディ化したユーモラスな作品としても知られています。ブラウンの長編作品としては、他に『火星人ゴーホーム』と並ぶ代表作と位置付けられています。

初めに日本語訳は、1956年に元々社から出版されたのち、早川書房より新訳が登場しましたが、現在は絶版となっています。

主要登場人物

• - キース・ウィントン：本作の主人公であり、SF雑誌の編集者。
• - ドペル：全太陽系宇宙艦隊の司令官であり、天才科学者。星間戦争での英雄。
• - メッキー：人工頭脳で、飛行能力やテレパシーなどを持つ。
• - ジョウ：元軍属で、現在は常習犯罪者。タクシー運転手でもある。

あらすじ

1954年、ある夜、キース・ウィントンは無人月ロケット第1号の墜落に巻き込まれ、その後、彼の身体は壊滅的に粉砕されたと報じられます。しかし、実際には彼は死んでおらず、別の次元に転移してしまったのです。彼が転移した世界は、すでに宇宙旅行が実用化され、月人の観光客が街を歩き、天才科学者であり英雄であるドペルが指揮を執る中、アルクトゥールス星人との戦争が行われている異様な世界でした。

最初のうちは次元の転移に気づかず、周囲の常識を無視した行動を取ったため、ウィントンはアルクトゥールス星人のスパイと誤解されて追われることに。さらに彼は元の世界の通貨を使えず、宿なしで困窮する中、夜間に濃霧管制が施された街で無法地帯の中を彷徨うことになります。

苦労の末に「世界史概観」という書籍を手に入れ、この異世界の歴史に触れます。この世界の流れは元の世界と似ているものの、1903年にライト兄弟が飛行機を発明する代わりに、別の教授が偶然瞬間移動装置を創り出し、人類は早期に宇宙に進出したという不思議な展開が描かれています。

ついに当局に捕まったウィントンは、故郷の地球を離れざるを得ません。土星軌道にいるドペルとその創造した人工頭脳メッキーの庇護を求めるため、小悪党のジョウと共に自家用宇宙艇を奪って宇宙に飛び出します。途中で月に立ち寄り、憧れの月面に降り立つも、その現実に失望し、冒険の夢とは裏腹に現実を突きつけられるのです。

ようやくドペルに会ったウィントンは、思った通りのSFオタクである彼から、次元間転移の仕組みや、自身の思考が転移先を決めるという重要な情報を聞かされます。ウィントンは彼から「バートン式電位差発生機」付きの小型宇宙艇を託され、元の世界への帰還の道を模索することになります。果たして、ウィントンは無事に元の世界に戻れるのでしょうか…。

書誌情報

• - 佐藤俊彦訳『発狂した宇宙』元々社〈最新科学小説全集 3〉、1956年
• - 稲葉明雄訳『発狂した宇宙』早川書房
• - ハヤカワ・SF・シリーズ 3127、1966年
• - ハヤカワ文庫SF 222、1977年

この作品は、SF文学の中でも特に創造的なアイデアとユーモアにあふれる作品として、今でも多くの読者に親しまれています。

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