ハヤカワ・SF・シリーズ

ハヤカワ・SF・シリーズは、早川書房が1957年12月から1974年11月にかけて刊行したSF小説の叢書です。全318冊に及ぶこのシリーズは、SFファンにとって特別な存在であり、日本のSF史においても重要な役割を果たしました。

「銀背」の愛称で親しまれたSFシリーズ

ハヤカワ・SF・シリーズは、銀色の背表紙が特徴で、通称「銀背」として親しまれました。また、「（ハヤカワ）ポケットSF」と呼ばれることもありました。先行して刊行されていたハヤカワ・ポケット・ミステリ（ポケミス）と同じ「ポケット・ブック判」（縦18.4cm、横10.6cm）という独自の判型で、上下二段組で構成されています。E・E・スミスやH・G・ウェルズなど、SFの古典的作品は、金の背表紙で刊行されていました。

刊行開始の経緯

1957年12月、シリーズは「ハヤカワ・ファンタジイ」という名称で刊行を開始しました。当時、「サイエンス・フィクション」という言葉に対する偏見が強かったため、あえてこの名称が用いられました。作品選定においては、一般読者、特にミステリー読者を意識し、最初からSF色の強い作品ではなく、サスペンスやスリラーとしても楽しめる作品を選ぶ方針がとられました。

シリーズの終焉とその後

シリーズ最後の書籍は、1974年11月に刊行されたハリイ・ハリスン『殺意の惑星』（318冊目）でした。その4年前の1970年8月には、ハヤカワSF文庫（現・ハヤカワ文庫SF）が創刊され、早川書房のSFレーベルは文庫に一本化されました。しかし、ハヤカワ・SF・シリーズはその後も増刷され、多くの読者に親しまれました。

年表

1957年12月 - 「ハヤカワ・ファンタジイ」として刊行開始。ジャック・フィニイ『盗まれた街』、カート・シオドマク『ドノヴァンの脳髄』
1962年4月 - レイ・ブラッドベリ『太陽の黄金の林檎』からハヤカワ・SF・シリーズに改称。
1974年11月 - ハリイ・ハリスン『殺意の惑星』が最後の刊行（318冊目）となる。
1984年11月 - ハヤカワ・SF・スペシャルとして栗本薫『火星の大統領カーター』がハヤカワ・SF・シリーズと同じ装丁で刊行される。
1995年9月 - 早川書房創立50周年記念として、カート・シオドマク『ドノヴァンの脳髄』の第4版、エリック・フランク・ラッセル『超生命ヴァイトン』（初版1964年刊）の第6版、ヒューゴー・ガーンズバック『ラルフ124C41+』（初版1966年刊）の第2版、ジョン・W・キャンベル『影が行く』（初版1967年刊）の第2版が発行される。
「SFマガジン」2016年8月号で「ハヤカワSFシリーズ総解説」が特集される。

新☆ハヤカワ・SF・シリーズ

2012年には、同じく新書判で新☆ハヤカワ・SF・シリーズが創刊されました。これは、往年のハヤカワ・SF・シリーズの精神を受け継ぎ、新たなSF作品を読者に届けることを目的としています。

関連シリーズ

ハヤカワSFシリーズ Jコレクション（2002年4月 - ）：日本作家の叢書。判型は四六判変形。
新☆ハヤカワ・SF・シリーズ（2012年 - ）
世界SF全集（1968年 - 1971年）
ハヤカワ文庫SF（1970年 - ）
* ハヤカワ・ポケット・ミステリ：同一判型の姉妹叢書。


ハヤカワ・SF・シリーズは、日本のSF界に多大な影響を与え、多くのSF作家やSFファンを育てました。その功績は、SF史に永遠に刻まれることでしょう。

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