瞬間接着剤

瞬間接着剤とは

瞬間接着剤は、その名の通り、対象物を瞬時に接着する接着剤です。中でも、シアノアクリレートを主成分とするものが一般的で、空気中の水分に反応して硬化する性質を持ちます。この反応の速さが、瞬間接着剤の最大の特徴です。

シアノアクリレート系瞬間接着剤

シアノアクリレート系瞬間接着剤は、モノマー（単量体）であるシアノアクリレートが、微量の水分に触れることで重合し、ポリマー（重合体）となって硬化します。これにより、接着対象物を瞬時に固定できます。製品は、さらっとした液状のものが主流ですが、垂れにくいゼリー状のものもあります。ゼリー状のものは、垂直面での使用に適しています。

主な製品とメーカー

日本では、「アロンアルフア」が広く知られています。東亞合成が製造し、コニシが販売しています。印象的なテレビCM戦略により、一般家庭にも普及しました。その他、セメダイン（ヘンケル（Henkel）のロックタイト（Loctite）ブランド）、アルテコ、デンカ（旧：電気化学工業）のハードロックなどがあります。近年では、着色された製品も登場しています。

接着のメカニズム

シアノアクリレートは、通常は液体ですが、接着面に付着した微量の水分によって重合を開始します。市販されている製品の主成分はシアノアクリレート100％と表示されていますが、実際には1%に満たない各種添加物が含まれており、これらが製品ごとの特性を生み出しています。硬化促進剤（主成分はトルイジン）を併用することで、より短時間で強力に接着することも可能です。
また、アセトンを使うことで接着部分を剥がすことができます。

用途

瞬間接着剤は、以下のような用途で利用されています。

金属、硬質プラスチック、ゴムの接着: 平滑な面同士の接着には非常に強力ですが、衝撃には弱いため、半永久的な接着には向きません。衝撃への耐性を高めた製品も存在します。
木材、曲面の接着: 吸収性の高い木材や密着性の低い曲面には接着力が劣るため、プライマーを併用することがあります。
化石の発掘: 仮止めに利用されることがあります。
医療用接着剤: 手術や水絆創膏、液体絆創膏の代替として利用されています。特に、あかぎれや小きりきず、靴ずれなどの治療に用いられます。処置後は水に濡れても剥がれにくいのが特徴です。剣道愛好家や格闘家にも利用されています。
肉盛り補強、隙間埋め: 重曹やタルク粉末と組み合わせることで、接着部の肉盛り補強や隙間を埋めることができます。速乾性のキャスト剤としても利用できます。

注意点

瞬間接着剤を使用する際には、以下の点に注意が必要です。

指同士の接着: 子供のいたずらや液漏れで指同士が接着してしまうことがあります。その際は、無理に剥がさず、ぬるま湯でゆっくりと揉みほぐすようにしてください。専用の剥離剤もありますが、有機溶剤が含まれているため注意が必要です。
危険な箇所への接着: 身体の危険な箇所に接着してしまった場合は、病院で医療用の剥離剤による処置を受けてください。
化学繊維への使用: 化学繊維に染み込むと激しく反応し、高温になるため注意が必要です。
白化現象: 硬質プラスチックに使用すると、接着面の周囲が白くなることがあります。これは強く擦ると落とせますが、周囲の仕上げに影響が出る可能性もあるため、接着の際は注意が必要です。
保管中の劣化: 劣化が早いため、開封後は冷蔵庫で保管すると劣化を抑えることができます。
湿度と重合微粉末: 湿度によっては、白化現象の原因物質である重合微粉末が空気中に舞うことがあります。これは異臭を発し、人体にもあまり良くありません。
有毒ガスの発生: 高熱源と接触すると分解し、シアン系の有毒ガスが発生するため、火気厳禁です。
過剰な塗布: 多めに塗布しても接着力が上がるわけではありません。むしろ、重合に必要な水分が不足して、硬化しないことがあります。

参考文献

アロンアルフア公式サイト

瞬間接着剤