神無月

神無月（かんなづき）とは

神無月（かんなづき、かみなづき）は、日本における旧暦10月の異称です。現代では、新暦10月を指すこともあります。この名前の由来については、様々な説がありますが、一般的に知られている「神がいない月」という解釈は、後世に生まれた俗説です。

語源

「神無月」の語源ははっきりしていませんが、有力な説の一つに「神の月」というものがあります。これは、「無」を「の」という意味で解釈するもので、水無月が「水の月」であることと同様の考え方です。しかし、「神無月」という名前から、「神様が出雲に集まって、他の土地には神様がいなくなる月」という俗説が広まりました。この説は、平安時代以降に、出雲大社の御師が広めたとされています。沖縄県では、旧暦10月には祭事が行われないことから、「飽果十月（あきはてとつき）」と呼ばれ、「神のいない月」と考えられていました。

日本国語大辞典には、神無月の語源として、以下の11の説が挙げられています。

1. 諸神が出雲に集まり、他の地では神が不在になる月である（有力な俗説）。
2. 諸社で祭りのない月である。
3. 陰の神が亡くなる月である。
4. 雷がない月（雷無月）である。
5. 神の位がない月（上無月）である。
6. 神が新しい穀物を味わう月（神甞月）である。
7. 新穀で酒を醸す月（醸成月）である。
8. 稲を刈る月（刈稲月）である。
9. 木の葉が色づく月（黄葉皆月）である。
10. 神の月である（「無」は「の」の意味）。
11. 年末に近い月（上の月）である。

「神無月」にまつわる伝承

「神無月」という名前の俗説が広まったことで、出雲地方に神様が集まるという伝承が生まれました。そのため、出雲地方では10月を「神在月（かみありづき）」と呼ぶようになりました。この伝承に基づき、出雲では旧暦10月に神々を迎えるための様々な神事が執り行われます。

出雲の神迎えと神送り

出雲では、旧暦10月10日の夜に、稲佐浜で全国から集まった神々を迎える「神迎祭」が行われます。その後、出雲大社で会議が行われるとされ、11日から17日まで「神在祭」が執り行われます。18日には、神々を送り出す「神等去出祭」が行われます。出雲大社の境内には、神々の宿舎となる「十九社」があります。

また、出雲以外でも、日御碕神社、朝山神社、万九千神社、神原神社、佐太神社、売豆紀神社、神魂神社、多賀神社など、多くの神社で神在祭にまつわる神事が行われます。島根県西部では、神楽を奉納する地域もあります。

その他の地域の伝承

長野県小諸市の飯綱山では、神無月に神々を出雲に送る「神送り」と、出雲から帰ってきた神々を迎える「神迎え」が行われていましたが、火災により中断されています。

出雲に集まる神々は、大国主神系の国津神とする説や、天照大神を含む天津神とする説などがあります。対馬の天照神社では、天照大神は神無月に最後に来て、最初に退出すると伝えられています。

諏訪大社では、祭神の諏訪明神が龍の姿で出雲に行くものの、巨大なため出雲の神々に配慮され、出雲に行かなくても良いとされ、神無月でも神がいるとされています。

能登の志乎神社では、祭神の建御名方神が留まり能登を守るとされ、この神社は「鍵取明神」と呼ばれています。

各地には、神無月にも出雲に行かない「留守神」がいるという伝承もあります。荒神や恵比須神が留守神とされることが多く、10月に恵比須講を行う地域もあります。

山口県相島では竈の神様である荒神、群馬県大泉町や大胡町では荒神と恵比須神、福島県石城地域では眷族が多い荒神が留守神とされています。

江戸時代には、鹿島神宮の祭神である鹿島大明神が不在で、恵比須神が居眠りをしたために、大鯰が暴れて地震が起きたという伝承もあります。

まとめ

神無月は、旧暦10月の異称であり、神々が出雲に集まるという伝承が広く知られています。しかし、その語源ははっきりしておらず、様々な解釈が存在します。各地には、神無月に関する独自の伝承が残っており、日本人の神様に対する信仰の多様性を示しています。

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