御師

御師（おし、おんし）について

御師は特定の社寺に属し、その社寺を訪れる参詣者や信者のために祈祷や案内を行い、宿泊の世話をする神職のことを指します。特に伊勢神宮に関連して「おんし」と呼ばれる存在ですが、他の神社でも類似の役割を果たしていました。御師の文化は平安時代から始まり、当時は「御祈祷師」という言葉が使われていました。これは主に神社に所属する僧侶を指しており、その後、神社の参詣者に対するサポートが加わる形で現在の形に発展しました。

歴史的背景

平安時代の御師には一部の名だたる神社が存在しました。石清水や賀茂、日吉などの神社がその例です。但し、最も有名なのは熊野の三山に由来する熊野御師です。熊野詣は平安時代末期に貴族の間で広まった信仰の一形態で、その際、祈祷や宿泊の手配を行ったのが熊野御師でした。当初、参詣者との間には都度契約が交わされていましたが、次第に恒常的な関係が形成され、御師が「師」として、参詣者を「檀那」と呼ぶようになりました。この関係は鎌倉時代に武士や後には農民などにも広がりました。

鎌倉から室町時代にかけて、伊勢神宮や富士講、そのほか松尾や三嶋、大山などの御師も活発に活動しました。特に出雲大社も源頼朝に関連する御師が存在したことが『吾妻鏡』に記されています。

江戸時代に入ると、御師は百姓と神職の中間的な地位とされ、信仰が観光の側面を持つようになると、伊勢や富士を中心に多くの神社で御師の制度が発展しました。伊勢御師は全国各地に派遣され、地域の団体（講）の管理を行い、参詣者を迎える宿坊を経営していました。こうした中で、御師の職や檀那の相続や譲渡などが盛んに行われ、強力な御師のもとに多くの檀那が集まりました。

一方で、熊野御師は信仰の凋落とともにその存在が薄れていきました。しかし、出雲大社の御師組織は成長と発展を遂げ、「出雲講」や「甲子講」が誕生し、出雲大社教の基礎を築きました。地方においても出雲御師が布教するための施設、丹所が設けられました。

明治以降の変遷

明治時代に入り、政府主導の神祇制度が整えられると、御師は急速に衰退しました。明治2年には神職の葬儀が神葬祭に改められ、御師は正式な神職ではないため、葬儀を行うことが禁止されました。御師たちはこの変化に対抗しましたが、明治4年には御師の職そのものが廃止され、ほとんどの御師は一般平民に編入されました。その後、彼らは農業や宿屋業に転職しましたが、富士講の御師たちは集まって扶桑教を結成するなど、宗教的な活動を続けようとしました。

富士御師について

天正壬午の乱では、渡辺囚獄佑 が関与したとされています。富士講の御師は、世界遺産「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」に登録されている旧外川家住宅や小佐野家住宅を持っています。これらは、国の重要文化財にも指定されています。また、上文司家住宅や原家住宅なども国の登録有形文化財に登録されています。

文学作品における御師

御師をテーマにした作品として、「御師弥五郎―お伊勢参り道中記」（西條奈加）や「咲夜姫」（山口歌糸）などがあります。これらの作品は御師の役割やその文化的背景を探求しています。

関連項目

• - 羽書
• - お蔭参り
• - 宿坊
• - 宿泊施設
• - 伊勢暦
• - 堂者引き

このように、御師は日本の宗教文化において重要な役割を果たしてきました。その活動は、信仰と直接的な関わり合いを持ちながら、人々の生活や文化に深く根付いています。

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