種苗交換会

秋田県種苗交換会：歴史と伝統を繋ぐ秋田県最大の農業イベント

秋田県種苗交換会は、秋田県農業協同組合中央会が主催し、毎年秋に秋田県内で開催される農業イベントです。その起源は明治時代に遡り、農家同士が手作りの作物や種子を持ち寄り、互いに見せ合い、交換し合うという素朴なものでした。しかし、時代とともにその規模と内容は拡大し、現在では農業に関連する様々な展示や販売が行われ、農家だけでなく一般消費者も楽しめる総合的なイベントとして、秋田県民に広く愛されています。

種苗交換会のルーツ：石川理紀之助と老農たちの熱意

種苗交換会の原点は、1878年（明治11年）に石川理紀之助が中心となり、秋田県南秋田郡八橋村（現在の秋田市八橋）で開催された種子交換会にあります。当時の秋田県では、乾燥法の不備による腐れ米の発生や、桑・菜種・果樹などの商品作物の発展の遅れ、西洋技術の導入の遅れなどが課題となっていました。これらの課題を解決するため、県令であった石田英吉は、各地の老農たちの知恵と経験を生かすことを考え、45名の老農を勧業係に取り立てました。その中に、老農の代表である石川理紀之助も含まれていました。

その後、秋田県勧業課長の樋田魯一が主催し、秋田市で第1回の勧業会議が開催されました。この会議で、由利郡平沢（現在のにかほ市平沢）の佐藤九十郎から「種子交換の見込書」が提議され、樋田会頭がこれを採用したことが、種苗交換会開催のきっかけとなりました。

第1回目の種子交換会では、稲65点、大豆19点、小豆6点、アワ14点など、合計132点が出品され、564人もの人々が交換を希望する作物に入札しました。この盛況ぶりから、種子交換会が農家にとって有益な情報交換の場であることがわかります。

発展と変遷：農民たちの手による継続

種子交換会は回を重ねるごとに発展し、1882年（明治15年）には出品数が1752点に達しました。この年から名称も現在の「種苗交換会」に改められ、勧業会議（現在の談話会）を合体させることで、農民にとってより役立つように運営されました。しかし、財政負担に悩む県が隔年開催を打ち出した際、石川理紀之助を中心とする「歴観農話連」が、農の祭典を毎年開催すべきであると主張し、自力での開催を実現しました。

その後、種苗交換会は秋田県農会の手に移り、明治40年（1907年）には開催地として県内各市町村が持ち回りで引き受けるようになりました。昭和恐慌や太平洋戦争などの困難な時代も乗り越え、一度も休むことなく開催され続け、秋田県最大級のイベントとして発展継承されてきました。2020年には新型コロナウイルス感染症が流行しましたが、一般非公開という形で開催されました。

イベントの内容：農業の魅力を発信する多彩な企画

種苗交換会は、秋田県内の9つの地域を9年かけて巡るように開催地が決定されます。開催地では、新穀感謝農民祭とともに開会式が行われ、農業功労者の表彰や農産物の審査発表などが行われます。また、会期末には交換会関係者の物故者追悼会が営まれ、最終日の褒賞授与式によって閉幕します。

メイン会場では、農産物の展示会のほか、農業教育の発表会、果物やコメの品種に関する解説コーナーなどが設けられます。また、農業機械専門のモーターショー「おらほの農機ショー」や農協厚生連によるシンポジウム、植木苗木市・物産販売なども行われ、農業に関する幅広い情報に触れることができます。

秋田県種苗交換会は、単なる種子の交換会にとどまらず、農業の振興と発展、そして県民への農業理解の促進に貢献する重要なイベントとして、今後もその役割を果たし続けるでしょう。

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