稲田豊史

稲田豊史：多様な視点と深い洞察で現代社会を映し出すマルチな才能

稲田豊史氏は、1974年愛知県春日井市生まれのライター、コラムニスト、編集者、そして漫画原作者である。愛知県立明和高等学校、横浜国立大学経済学部卒業という経歴を持つ彼は、多様な分野にまたがる活動で知られている。

映画配給会社から出版業界へ、そして独立

彼のキャリアは、1997年に映画配給会社ギャガ・コミュニケーションズへの入社から始まる。当初は洋画買い付け支援部署に配属された後、出版部門へ異動。ゲームショップやDVDセル店向けの業界誌で編集記者、編集長を歴任し、出版業界での経験を積んだ。2008年にはキネマ旬報社へ所属、一般書籍やムックの企画・編集に携わる。その後、2013年に独立し、フリーランスとして活動を開始する。

幅広い執筆分野と多様な活動

稲田氏の執筆分野は多岐に渡る。映画、ポップカルチャー、エンターテインメントビジネスといったエンタメ関連に加え、近年注目されている「女子論」「男女関係論」「離婚問題」といった社会問題にも鋭い視点を当てている。雑誌やウェブへのコラム、映画レビュー、ルポ、エッセイの寄稿はもちろんのこと、インタビューや対談の構成、トークセッションやパネルディスカッションの司会進行など、その活動は多様性に富んでいる。さらに、書籍の企画・編集・構成（ブックライティング）も手がけている。

男性の離婚問題に焦点を当てた『ぼくたちの離婚』シリーズ

特に注目すべきは、離婚した男性への匿名インタビューをまとめたルポ『ぼくたちの離婚』シリーズである。2019年と2023年に書籍化され、大きな反響を呼んだ。妻の浮気や精神的DV、モラハラ、メンヘラ被害などの苦悩を誰にも相談できずに抱え込んだ男性たちの経験は、「男性版の#MeToo」と評され、社会的な問題提起にも繋がっている。

現代のコンテンツ消費を分析した『映画を早送りで観る人たち』

2022年には、倍速視聴習慣やタイムパフォーマンス志向、ファスト映画、Z世代のコンテンツ消費動向などを分析した『映画を早送りで観る人たち　ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』を出版。現代社会におけるエンターテインメント消費のあり方を鋭く切り取った本書は、「新書大賞2023」で第2位にランクインするなど、高い評価を得ている。

『ゲームの歴史』におけるゴーストライター論争

2022年には、岩崎夏海氏との共著として『ゲームの歴史』（講談社）を出版した。しかし、本書の内容に事実誤認があるとの指摘が業界関係者から相次ぎ、販売停止、回収・絶版という事態に発展した。稲田氏はブックライティングを担当したものの、事実誤認の責任については岩崎氏に問われる一方、自身は批判に反応しなかった。

多様なメディアでの活動と今後の展望

稲田氏は、大山顕、佐藤大、速水健朗、山内マリコ、うめ・妹尾朝子らで構成されるトークユニット「団地団」の一員として、トークライブや映画祭にも登壇するなど、メディア活動を多角的に展開している。

彼の著作は多岐に渡り、『セーラームーン世代の社会論』『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』『「こち亀」社会論』『オトメゴコロスタディーズ』など、ポップカルチャーを題材とした作品から、社会問題に鋭く切り込んだルポルタージュまで幅広くカバーしている。多くの雑誌やウェブ媒体で連載や寄稿も行っており、現代社会の様々な側面を多角的に分析し、独自の視点で発信し続けている。 彼の今後の活動にも注目したい。

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