積読

積読（つんどく）とは

積読（つんどく）とは、購入または入手した書籍を読まずに自宅で積んでおく状態を指します。この言葉は、「積んでおく」と「読書」の融合により生まれたもので、その起源は1860年代から1970年代にかけて存在したとも言われています。厳密な由来は定かではありませんが、概念そのものはそれ以前から存在していたことが認められています。

言葉の起源と歴史

『書物語辞典』に記載されている内容によれば、江戸時代にはすでに朗読や黙読といった方法が存在していたことから、「積読」という言葉以前に、類似の行動はあったと考えられます。この言葉が一般に普及し始めたのは明治時代のことです。歴史的には、田尻稲次郎や和田垣謙三など複数の考案者がいるとの説があります。

1879年に刊行された小雑誌『東京新誌』には、「ツンドク家」や「ツンドク先生」といった表現がみられ、また内田魯庵の随筆『ツンドク先生礼讃』においてもこの表現は見受けられます。ここで使用された「ツンドク」は仮名表記であり、積読が広く知られるようになっていく過程がうかがえます。さらに1982年には室山まゆみの漫画『あさりちゃん』第8巻でも「積ん読」として同じ意味での使用が確認されています。

日本独自の文化

積読に類似する言葉は日本語以外には存在せず、特に英語圏においては2010年代に「tsundoku」として一般的に知られるようになりました。エラ・フランシス・サンダース著の『翻訳できない世界のことば』には、「木漏れ日」や「わびさび」と同様に、多言語でのニュアンスが表現しきれない言葉として紹介されています。

積読の心理的側面

アルフレッド・エドワード・ニュートンの言葉を借りると「読むことができなくても手に入れた書籍は無限に向かう魂よりも空っぽな1冊の書籍を読むよりも多くの書籍を購入したくなる興奮を生み出す」のです。彼は、たとえ読まなくとも本は存在することで安心感をもたらし、それが読者に慰めを与えることを指摘しました。このように、積読は単なる読まない本の山ではなく、そこには本を読むこと自体に対する愛着が表れています。

結論

このように、積読はただの読まない本の積み重ね以上のものとして、日本の文化と精神を色濃く反映しています。現代でも多くの人々が積読を抱えていますが、それは彼らが書籍や知識への欲求、安心感を求めていることの表れであり、本という存在がどれほど心の支えになっているかを示しています。

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