田尻稲次郎

田尻稲次郎の生涯と業績

田尻稲次郎（たじり いなじろう）は、1850年6月29日（嘉永3年）に薩摩藩士の家庭で生まれました。彼は日本の経済学の発展に寄与した著名な経済学者であり、政治家、官僚としても知られています。さらに、専修大学の前身である専修学校の創設に関わった人物でもあります。彼は1923年8月15日に亡くなりました。

学問と留学

稲次郎は16歳のときに薩摩藩の開成所で洋学を学び、長崎へ遊学しました。その後、上京し、1869年に慶應義塾に入学しました。それを経て、大学南校で英学を学び、海軍兵学寮で兵学も修得しました。

彼の学問の道はその後も続き、1871年から1879年までの9年間、アメリカに留学しました。ハートフォード高校を経て、イェール大学に進学し、経済学や財政学を学びました。留学を終えた彼は、日本に帰国後、東京大学で経済学を教えました。また、その授業を受けた後の生徒たちは、後に大蔵省で重要な役割を果たすこととなります。

大蔵省での活動

稲次郎は1880年に専修学校を設立し、1884年には大蔵省に入省します。大蔵省では国債局長に任命されつつ、法科大学の教授も兼任しました。1888年には日本初の法学博士の学位を取得し、1891年には大蔵省の銀行局長、主税局長、貴族院議員になりました。追加で、1892年には大蔵次官として初めての任務を講じます。

その後、1898年に再度大蔵次官に復帰し、大蔵総務長官や会計検査院院長などを歴任しました。特に日露戦争の際には、戦費の調達や債務の処理において重要な貢献を果たしました。

政治活動と東京市長

退官後、彼は政治の舞台にも進出し、東京市長として都市の発展に寄与しました。1912年の東京市会議員選挙には小石川区から候補者として名乗りを上げましたが、鳩山一郎に敗れてしまいます。その後も、蓮沼門三が結成した修養団の初代団長として、社会活動に関与しました。

人柄と逸話

稲次郎は硬骨な学者として知られており、その独特の行動は同時代の作家に「奇行に富む」と評されました。特に、自動車を嫌う彼の姿勢は有名で、宮中へ入る際を除いては人力車さえ利用しなかったそうです。そのため、友人たちからは「きたなり」と呼ばれました。また、彼は「積ん読」という言葉の考案者とされることもあります。日本の文学や文化にも大きな足跡を残しました。

家族と栄典

田尻家は多くの著名な人物を輩出しており、彼自身も多くの子孫を持つ家系です。数々の栄典を受け、1884年に正六位、1891年に正五位、1898年には従三位、1907年には子爵に叙任されています。さらには、数々の勲章も授与されています。彼の著作はいずれも経済学に関する重要な文献として今なお引用され続けており、学問への貢献は不変のものがあります。

おわりに

田尻稲次郎の生涯は、日本が近代化へと進んでいく中で、多角的な才能を発揮した時代の縮図とも言えます。彼の業績は、日本の経済学界においても未だに重要として評価されています。

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