和田垣謙三

和田垣謙三：明治・大正期の経済学を牽引した教育者

和田垣謙三（わだがき けんぞう、1860年8月30日 - 1919年7月18日）は、明治時代から大正時代にかけて活躍した日本の経済学者であり、法学博士でもあります。号は吐雲。

生涯と業績

兵庫県出身の和田垣は、1881年に東京帝国大学を卒業後、ヨーロッパに留学。ケンブリッジ大学とベルリン大学で経済学を学び、1883年に帰国しました。帰国後は文部省に勤務した後、1886年に帝国大学法科大学の教授に就任。金井延と共に学部を主導し、ドイツの社会政策学派の財政学を導入しました。これにより、従来の自由主義経済学から社会政策的な視点を取り入れた経済学へと転換を促しました。1891年には法学博士の学位を取得しています。

1898年には農科大学教授に転じ、その後は教育者として活躍。日本女子商業学校校長や東京商業学校校長を歴任し、民間における実業教育の発展に尽力しました。

1919年、腎臓炎のため58歳で死去。墓所は雑司ヶ谷霊園にあります。

学問的貢献

和田垣の学問的な貢献として特筆すべきは、ドイツ社会政策学派の財政学を日本に導入したことです。シュタインやワグナーらの理論を基に、国家による経済介入を積極的に肯定する立場を取りました。これは、当時の日本において主流であった自由放任主義的な経済観を大きく転換させるものであり、日本の経済政策に大きな影響を与えました。

また、教育者としては、実業教育の重要性を早くから認識し、その普及に尽力しました。学校経営者としての活動に加え、数多くの教科書や著作を著し、幅広い層への教育に貢献しています。

著作活動

和田垣は、経済学、法学、英語など幅広い分野で多くの著作を残しました。主な著作には以下のようなものがあります。

『経済教科書』
『新英和辞典』
『法制教科書』
『英文典』
『中学英文典』
『経済講義』
『会話作文 和英新辞典』
『青年諸君』
『世界商業史要』
『家庭経済』

これらの著作は、当時の学生や実務家にとって貴重な知識源であり、日本の教育と経済発展に大きく貢献しました。また、海外の文献の翻訳や監修も積極的に行い、国際的な視点を取り入れた学術活動を展開しました。

栄典

その功績から、和田垣は数々の栄典を受けています。

1903年（明治36年）10月30日 - 従四位
1908年（明治41年）12月11日 - 正四位
1919年（大正8年）7月19日 - 正三位
1900年（明治33年）12月20日 - 勲四等瑞宝章
1904年（明治37年）12月27日 - 勲三等瑞宝章
1912年（大正元年）12月18日 - 勲二等瑞宝章
1915年（大正4年）11月10日 - 大礼記念章
1919年（大正8年）7月19日 - 勲一等瑞宝章

これらの栄典は、和田垣の学術的、教育的な業績が高く評価された証と言えるでしょう。

まとめ

和田垣謙三は、明治から大正にかけての激動期において、日本の経済学の発展と実業教育の普及に大きく貢献した人物です。その学問的業績と教育者としての情熱は、現代においても学ぶべき点が多いと言えるでしょう。

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