等々力家

等々力家：安曇野に残る歴史と文化の証

長野県安曇野市穂高等々力に位置する等々力家は、江戸時代には本陣として機能した由緒ある建造物です。安曇野市有形文化財（旧・穂高町文化財）にも指定されており、歴史的価値の高い建造物として高く評価されています。桃山時代中期様式の庭園、そして江戸時代中期に建てられたとされる長屋門と書院は、当時の建築様式や技術を伝える貴重な遺産です。JR穂高駅から大王わさび園へ向かう途中にあり、年間を通して多くの観光客が訪れ、安曇野の豊かな歴史と自然に触れる機会を提供しています。

等々力の地名と読み方

「等々力」という地名は、全国各地に見られますが、その読み方には地域差が見られます。多くの文献では「とどろき」とされていますが、『信濃国郷村帳』（1647年）や『信濃国郷帳』（1702年）といった江戸時代の史料には「トドリキ」とルビが振られており、江戸時代以降は「とどりき」と読むのが正しいと考えられています。国土地理院の地形図にも「とどりき」と表記されていることから、この読み方が確実視されています。地名由来については、滝や沢の音、あるいは水が停滞する場所といった水に関連した説が有力です。等々力のある安曇野市穂高等々力は、穂高川と中曽根川の自然堤防上に位置し、縄文土器の出土からも古くから人が住んでいたことが伺えます。

等々力家の歴史：飛鳥時代から近世まで

等々力氏は、飛鳥時代から安土桃山時代にかけて仁科氏の被官として活躍しました。仁科氏との繋がりは古く、『仁科濫觴記』によると、等々力氏の祖は斉明天皇2年（656年）に大和岡本宮から派遣された田村守宮で、等々力の地に居住したことに由来すると言われています。室町時代の史料『大塔物語』には、大塔合戦において仁科盛房の一党として「戸度呂木（とどろき）」氏の名が登場します。その後、武田信玄の支配下では仁科盛信に属し、穂高地方を治めました。永禄10年（1567年）には、等々力豊前守定厚（または政景）が武田信玄への忠誠を誓う起請文に名を連ねています。天正8年（1580年）には、仁科盛信から馬市の監督を命じられた書状が残されており、当時の地域社会における等々力氏の役割を示しています。江戸時代に入ると郷士となり、小笠原氏に仕え、大坂冬の陣にも出陣。その後は帰農し庄屋となりました。

等々力家は、東龍寺（現・東光寺）の開基でもあります。天正18年（1590年）、貝梅の北城から現在の地に移築されました。江戸時代初期には、松本城主石川氏の時代に近隣の村々へ分家を出し、庄屋を務めました。松本藩の狩猟場（鴨場）があったため、等々力家は御本陣として、殿様の休憩所として利用されました。犀川通船の開通により、物資の集散地としても重要な役割を果たしました。等々力家の屋敷は、長屋門、本屋、殿様座敷などから成り、桃山様式の庭園も備えています。これらの建造物は、江戸中期に造られたと考えられています。また、等々力家の子孫には、古美術界や古典文学研究で著名な人物も輩出しています。

等々力家の屋敷：歴史と文化が息づく空間

等々力家の屋敷は、長屋門を備えた風格のある造りです。本屋の奥には、殿様座敷をはじめとする数部屋があり、桃山時代の様式を踏襲した庭園は、安曇野地方では珍しいものです。これらの建物と庭園は江戸時代中期に整備されたと推測され、当時の生活様式や美意識を今に伝えています。静謐な空間は、訪れる者に安らぎを与え、歴史の重みを感じさせます。

まとめ：安曇野の歴史を語る等々力家

等々力家は、単なる建造物ではなく、安曇野の歴史と文化を凝縮した存在です。長きにわたりこの地を見守り続けた等々力家の歴史、そしてその屋敷に刻まれた時間の流れは、訪れる人々に深い感銘を与えます。安曇野を訪れた際には、ぜひ等々力家を訪れて、その魅力を体感してください。

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