罹患率

罹患率とは

罹患率（りかんりつ、英: incidence）は、疫学における重要な指標の一つで、特定の期間内に、ある集団において新たに疾病が発生した割合を示すものです。発生率とも呼ばれます。具体的には、ある期間内に新たに発生した患者数を、その疾患のリスクにさらされている集団の総人口で割って算出します。

罹患率の概要

罹患率は、集団における疾病の発生頻度を測るための指標であり、予防医学の分野で一次予防の効果を評価する際に用いられます。疾病の種類別、性別、年齢別、地域別など、さまざまな切り口で計算することが可能です。

罹患率を把握することで、特定の集団における疾病の発生状況を詳細に分析し、効果的な予防対策を立案・実行するための基礎データを得ることができます。

罹患率の計算式

罹患率は、以下の式で算出されます。


罹患率 = (期間中に新たに発生した症例数 / 当該期間中の疾患の危険にさらされる集団の総人口) × 10ᵏ


ここで、10ᵏは、1,000人当たり、または10万人当たりの数値で表すための乗数です。

例えば、1年間に新たに発生した症例が20件、その疾患のリスクにさらされている集団の総人口が1,000人の場合、罹患率は以下のようになります。


(20 / 1000) × 1000 = 20


この場合、1,000人あたり20人が新たに発症したことになります。

罹患率の計算法

罹患率の計算では、分母となる集団は、その疾患に罹患する可能性のある人々に限定する必要があります。例えば、子宮癌の罹患率を計算する場合は、女性の人口を分母とし、男性は除外します。同様に、前立腺癌の罹患率を計算する場合は、男性の人口を分母とし、女性は除外します。

期間内の集団では、死亡や転出などが発生するため、より正確な罹患率を算出するために人年法が用いられることがあります。

有病率との違い

罹患率と混同しやすい指標として、有病率（Prevalence Rate）があります。有病率は、ある時点において、その疾患に罹患している人の割合を示すもので、罹患期間が長い疾患では大きくなる傾向があります。一方、罹患率は、特定の期間内に新たに発生した患者数のみを対象とするため、罹患期間には依存しません。

また、罹患率と有病率は、以下の点で異なります。

罹患率: 新規患者の発生率を示すため、疾病の発生状況や予防効果の評価に用いられる
有病率: ある時点での患者の割合を示すため、疾病の規模や医療ニーズの把握に用いられる

罹患率の注意点

罹患率は、1を超えることもあります。例えば、特定の期間内に、ある集団において複数の疾患が重複して発症した場合などが該当します。
罹患率の計算対象となる集団は、疾患のリスクにさらされている集団である必要があり、定義を明確にする必要があります。
疾患によっては、一度罹患すると再発が新たな罹患とみなされない場合があります。
罹患率は、その定義から罹患期間に依存しませんが、有病率は罹患期間が長いと大きくなります。
罹患致死率の高い疾患では有病率が小さくなる一方、罹患率は致死率に依存しません。

具体例

例えば、2017年の日本のデータでは、白血病全体の年間罹患率は、男性では人口10万人に対し13人、女性では人口10万人に対し8.9人です。このように、罹患率は、疾患の種類や性別によって異なります。

まとめ

罹患率は、疫学において疾病の発生状況を把握し、効果的な予防対策を講じる上で重要な指標です。罹患率の定義や計算方法を理解し、適切に活用することで、より健康な社会の実現に貢献することができます。

関連用語

発生数
罹病率
致死率
累積罹患率
累積死亡率
粗罹患率
年齢調整罹患率
罹患率比
標準化死亡比
* 致命率

もう一度検索