致命率

致命率（致死率）とは

疫学における致命率（致死率）とは、特定の病気に罹患した集団において、その病気が原因で死亡する割合を示す指標です。英語ではCase Fatality Rate（CFR）またはCase Fatality Riskと呼ばれます。致命率は通常、パーセンテージで表示され、感染症のリスクを評価するために用いられます。

致命率の算出

致命率は、ある期間中に特定の病気と診断された人の数（分母）に対する、その期間中にその病気で死亡した人の数（分子）の割合として計算されます。

例えば、ある地域で100人が同じ病気と診断され、そのうち9人が死亡した場合、致命率は9%となります。

ただし、調査期間中に治療中で生死が確定していない症例があると、致命率の算出に誤差が生じる可能性があります。特に、発症者が多く、回復や死亡までに時間がかかる感染症の場合、流行初期に計算された致命率と最終的な致命率にずれが生じることがあります。

死亡率との違い

致命率は、罹患者数（患者数）を分母とするのに対し、死亡率は、人口全体に対する死亡者数を調査するもので、人口数を分母とします。死亡率は、全ての死因による死亡者数、または特定の疾患による死亡者数を対象とし、一定期間の人口に対する死亡割合を計算します。

例えば、ある年に1万人の人口に対して糖尿病による死亡者が50人いた場合、糖尿病の死亡率は 10000:50 または 1000:5 となります。

致命率の正確性

厳密には、致命率は累積発生率として解釈されるべきであり、値は0から1の間になります。また、疾患の発症から死亡までの時間が考慮されていないため、「致命率」という言葉の使い方は正確ではないという指摘もあります。しかし、実際には科学論文などで広く使用されています。

様々な感染症の致命率

致命率は、感染症の種類によって大きく異なります。

伝達性海綿状脳症: 治療法がなく、致命率は100%です。
スペインかぜ: 致命率は2.5%以上でした。アジアかぜ、香港かぜは約0.1%、その他のインフルエンザの流行では0.1%以下です。
MERS: 致命率は約35%、SARSは約11%です。
レジオネラ症: 致命率は約15%です。
黄熱: 適切な治療を受けた場合でも、致命率は20%から50%に達します。
ペスト: 治療を受けない場合、致命率は60%に達します。
ザイールエボラウイルス: 最も致死的なウイルスの一つで、致命率は90%にもなります。
狂犬病ウイルス: 発症前にワクチン接種をしていない人が感染し、治療を受けなかった場合、ほぼ100%の致命率となります。
* 炭疽菌: 細菌兵器にも使用される炭疽菌は、感染部位により肺炭疽・皮膚炭疽・腸炭疽の3種類に分類されます。無治療の場合、肺炭疽の致命率は90％を超えます。


致命率を理解することは、感染症のリスクを評価し、適切な対策を講じる上で非常に重要です。また、感染症の流行状況を把握する上でも欠かせない指標と言えるでしょう。

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