羊蹄丸

羊蹄丸（ようていまる）

羊蹄丸は、日本の青函航路で1965年から1988年まで運航された客載車両渡船の名称です。この船が操作された青函航路には、2代目の羊蹄丸が登場し、その運航を支えました。

概要

羊蹄丸は1960年代初頭の青函連絡船の主力として、老朽化が進んだ戦時標準船に代わって投入されました。高度経済成長に伴う輸送需要の急増に対応するため、津軽丸型と呼ばれる客載車両渡船の一部として登場し、特に安全性を重視して設計されています。また、当時の最先端技術を取り入れることで航海速力を18.2ノットに引き上げ、青森と函館を最速3時間50分で結ぶことを可能にしました。このような理由から、「海の新幹線」とも称される存在となりました。

建造背景

羊蹄丸は日立造船株式会社の桜島工場にて建造され、ブロック工法を採用して効率よく組み立てられました。この工法により、異なる部品を事前に製作し、現場で組み立てることができるため、工期の短縮が実現されました。客載車両渡船としての構造は複雑で、溶接による歪みが問題とされたものの、最終的には計画通りのサイズで完成しました。このため、羊蹄丸は主に48両を積載できる能力を持つ船として知られるようになりました。

運航性能

羊蹄丸はより迅速な運航を実現するため、エンジン出力を従来の約2倍に引き上げる必要がありました。そのため、8台の中速ディーゼルエンジンを採用し、複数の推進用プロペラを使用するマルチプルエンジン方式を採用しました。これにより、離着岸の時間を短縮し、安定した運航が可能となりました。

安全対策

安全面でも多くの先進的な工夫が施され、車両甲板には水密扉が設置されるなど、万が一の浸水にも対応できる設計がなされています。さらに、乗客全員を収容できる膨張式救命いかだや、緊急時のための滑り台など、充実した安全設備が整えられました。

デザイン

羊蹄丸の外観には、他の船と区別するために色分けが施されました。元々国鉄連絡船の外舷色は黒でしたが、かつての洞爺丸からの伝統を受け継ぎ、特徴的な塗り分けが行われました。運航当時、船体はエンジ色とクリーム色で塗装されています。

展示とその後

羊蹄丸は運航終了後、1992年にはイタリアのジェノヴァ国際博覧会で展示され、またその後、東京の船の科学館でも展覧会が開催されました。2011年には愛媛県新居浜市に譲渡され、最終的には解体されて資源リサイクルの対象となりました。

輸送実績

羊蹄丸の運航期間は22年7ヶ月、総運航回数は35,826回、総運航距離は約403万kmに及び、1150万人以上の乗客を運んだとされています。この数字は、羊蹄丸が青函航路において重要な役割を果たしていたことを物語っています。

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