美保関事件

美保関事件

美保関事件とは、1927年8月24日に発生した大日本帝国海軍の艦艇による衝突事故です。この事件は、日本海軍が夜間無灯火演習を行っている最中に、艦艇同士の衝突が続発したものとして知られています。

概要

日本の海軍は、アメリカとの間で結ばれたワシントン海軍軍縮条約によって、艦艇の総排水量が制限されることになりました。それによって、連合艦隊は訓練の強化を必要とし、加藤寛治大将の指揮のもと、「訓練に制限無し」のスローガンを掲げて厳しい演習を重ねていました。

事件当日、島根県美保関沖において、第五戦隊に属する軽巡洋艦「神通」と駆逐艦「蕨」が衝突し、「神通」は艦首を失い大きな損害を受けました。駆逐艦「蕨」は沈没し、艦長を含む92名の乗組員が命を落としました。さらに、衝突を避けようとした「那珂」と駆逐艦「葦」も衝突し、どちらも大破し「葦」では28名が亡くなりました。

経緯

美保関沖で行われた夜間演習には、第一艦隊と第二艦隊の主要艦艇が集結し、艦艇の速力を活かして行われました。予測困難な状況の中で、艦隊の混乱が生じ、結局のところ事故を引き起こす要因となりました。

事故発生の瞬間、第五戦隊第2小隊の艦艇が仮想敵に近付く中、敵艦の探照灯に照射された「神通」は直ちに旋回しましたが、後続の艦艇との接触を避けられず、衝突事故が連鎖して起こりました。この時、艦長である水城圭次大佐は後の自決を選ぶことになります。

事故の影響

事故に対する捜査が行なわれ、結果的に水城艦長が法的責任を問われることになりましたが、彼は自決する道を選びました。この事件は、日本海軍にとって深い傷跡を残す結果となり、さまざまな教育的教訓を伴いました。

連合艦隊の司令官であった加藤寛治大将や参謀高橋三吉少将は、過重な訓練を行った結果として責任を問われることはありませんでしたが、加藤大将に対しては批判が寄せられることがありました。演習が不要な危険を伴ったものであったと多くの人々が感じたからです。

敬霊

事件発生の後、全国で捜索が行われ、必要な協力がなされましたが、多くの尊い命が失われました。事件の記憶を伝えるために慰霊碑が建立されており、犠牲者への祈りが捧げられています。特に「蕨」と「葦」の殉職者に対しての追悼の意が表され、海軍の歴史における重要な出来事として記憶されています。

美保関事件は、訓練と安全の重要性を再認識させる出来事であり、厳しい歴史的教訓を抱えています。

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