脊髄損傷

脊髄損傷について

脊髄損傷（せきずいそんしょう、英: Spinal Cord Injury）は、脊柱に強い外力が加わることで脊椎が破壊され、その結果として脊髄が損傷を受ける状態を指します。また、脊髄腫瘍やヘルニアのような内的要因でも似たような症状が現れることがあります。一般的には「脊損（せきそん）」とも略されます。この病態は中枢神経系に影響を与えるため、損傷が一度起きると自然には修復されず、現段階の医療技術でも効果的な治療法は確立されていません。

一般的な症状

脊髄損傷の症状は、損傷の程度によって「完全型」と「不完全型」に区分されます。完全型では、神経伝達機能が完全に絶たれてしまい、損傷部位以下の感覚や運動機能が完全に失われる状態です。不完全型の場合は、脊髄の一部が損傷を受けているため、いくつかの機能が残存します。

完全型の場合、患者は「動かない、感じない」といった状態に置かれ、その部位には大きな痛みを感じることも少なくありません。また、受傷後には意思とは無関係に筋肉が収縮したり痙攣を起こす現象が見られ、これを痙性または痙縮と呼びます。さらに、自律神経系にも損傷が及び、体温調節や代謝が不活発になることで、さまざまな合併症を引き起こすリスクがあります。

受傷原因

日本における脊髄損傷の患者は約10万人を超え、毎年5000人以上が新たに脊髄損傷を受けています。過去の調査によると、受傷の主な原因は交通事故（43.7%）、高所からの落下（28.9%）、転倒（12.9%）などでした。近年では、スノーボードなど新たな活動による受傷も増加傾向にあります。

リハビリテーション

脊髄損傷のリハビリは、急性期を過ぎた後に早急に行うことが重要です。ICUから一般病棟に移った際には、ベッドの角度を調整し、徐々に体を起こしていくプロセスを経て車椅子への移動を訓練します。リハビリの目的は、残された機能を最大限に活用し、日常生活を自立的に行えるようにすることです。

合併症

脊髄損傷には多くの合併症が伴うことが多く、特に褥創（じょくそう）や尿路感染症が深刻な問題です。褥創は、感覚を失った部位が血流不足により皮膚が壊死する現象であり、尿路感染症はカテーテル使用によって引き起こされる感染症です。これらの合併症の予防や管理が脊髄損傷者にとって極めて重要です。

治療と研究の進展

脊髄損傷の治療法には様々な研究が進められています。特に受傷直後の早期手術が効果的であるとされ、近年多くの文献でその有効性が示されています。また、再生医療の研究も進行中で、幹細胞を用いた神経再生の可能性などが注目されています。

結論

脊髄損傷は、生活の質を大きく損なう重大な疾患ですが、医療技術やリハビリテーションの発展によって、患者の生活改善が期待されます。今後もこの分野における研究が進み、より良い治療法が確立されることが期待されています。

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