自立生活運動

自立生活運動とは

自立生活運動、英語でいうところのIndependent Living Movement（IL運動）は、障害を持つ人々が自らの権利を主張し、自立した生活を実現するための社会運動です。本運動が興った背景には、従来の障害者支援制度が存在し、重度の障害を抱えた人々は慈善や温情によって援助を受けることが一般的であった時代があります。しかし、その結果、多くの障害者は施設での集団生活を強いられることとなり、医療従事者や介助者に依存せざるを得ない状況に置かれていました。自立生活運動はこのような保護主義への反発から生まれ、障害者のエンパワーメントを、すなわち自己決定や主体性の強化に焦点を当てた活動です。

自立生活の理念

「自立」という言葉は、経済的に自立し、自分自身で生活を管理することを指すことが多いですが、自立生活運動の観点からは、「自己決定」が核心にあります。従来の考え方では、日常生活が自立の指標となる場合が多かったのですが、自立生活の理念では、障害者が自らの選択で生活を構築できているのであれば、そのプロセスに介助が入ることも許容されます。たとえば、自分で服を着るのに2時間かかるとしたら、介助を受けることで15分で着替えを終え、社会に参加できる方が「自立」していると評価されるのです。

さらに、自立生活は単に障害者が主導権を持つことだけでなく、リスクを冒し失敗を経験することで成長する権利をも含んでいます。社会学者のガベン・デジョングは、障害者支援の常識を打破し、障害者が「消費者」としての役割を果たすべきだと主張しました。これは、自立生活センター（CIL）がボランティアに依存するのではなく、障害者自身が必要な介助者を雇用することで自己の生活を管理する形式に結実しているのです。

CILが実施した調査では、自立生活の要素が三つにまとめられました。まず、障害者がライフスタイルの選択と自己管理の権限を持つこと。次に、自立生活に必要な能力を保持すること。最後に、障害者が地域社会の中で通常の生活を営むことが求められています。

自立生活運動の歴史

自立生活運動は1960年代のアメリカ・カリフォルニア州で生まれました。この運動の起源は、障害を持つ学生たちの抗議活動にさかのぼります。1962年には、極度の身体障害を抱えるエド・ロバーツがカリフォルニア大学バークレー校に入学し、彼は後にCILを設立し、州のリハビリテーション局長に就任します。彼の入学の翌年には、ジョン・ヘスラーも同校に入り、さらに12人の身体障害者が在籍するようになります。彼らは、大学や地域社会のアクセシビリティを求める運動を展開しました。

1969年には「自立生活のための戦略」講座が開講され、1972年には障害者自身による自立生活支援サービスを行うCILが設立されます。その後、1973年にはリハビリテーション法504条に自立生活の理念が盛り込まれ、全国的に普及することになります。

日本では1973年の全国車いす市民集会を契機にIL運動への関心が高まり、1979年にエド・ロバーツが来日して講演を行うと、1986年にはCIL「ヒューマンケア協会」が設立されるなどの動きが見られました。2014年時点では、日本全国で130か所のCILが活動しています。この運動は、障害者の権利と自立を促進するための重要な役割を果たしています。

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