草履

草履（ぞうり）: 日本の伝統的な履物

草履は、鼻緒を持つ日本の伝統的な履物であり、特に明治時代以降、洋靴が広まるまでの日常生活において重要な役割を果たしていました。元々は藁を主材料とし、「藁草履」として知られています。草履には鼻緒部分（ストラップ）と台の部分（ソール）があり、類似の構造を持つゴム製のものは「ゴム草履」と呼ばれています。これにより、草履とゴム草履は形状は似ているものの、素材が異なることで種類が分かれます。

歴史的背景

草履と同様に植物繊維で作られた履物には「草鞋（わらじ）」があります。草鞋は、日本の律令制度の導入に伴い、古くから存在していた「鞋（かい）」という履物の一つでした。特に中国では、旅の際に履く消耗品として草鞋が使用されていました。草履は、草鞋の足首を縛る紐を簡略化して形成されたものとされ、平安時代中期には多くの庶民に広まっていきました。

近年の研究によると、家で作られた藁草履は農作業や外出、登校など様々な用途に使用されていたとされています。しかし昭和時代に入ると、農作業には地下足袋が用いられるようになり、その他の用途についてもゴム草履やゴム靴が登場し、使用される場面が変化しました。

第二次世界大戦後は、洋装化が進み草履の用途も主に和装に限定されるようになりました。その形状は、靴の影響を受けて足幅が狭くなり、台の後端から前壺へとほぼまっすぐ傾斜を付けた構造に変化しています。現代では、畳表の草履は主に歌舞伎などの舞台用やごく一部の男性用として目にすることがあります。

材料と種類

草履は、伝統的には藁が主な材料ですが、現在では趣味で草履を作る際にビニールロープや布ひもを使用することもあります。これにより「布ぞうり」と呼ばれる新しいスタイルの草履が生まれています。

草履の一種である「足半草履」は、靴底が足の先端の半分しかない形状が特徴です。このタイプの草履は、ぬかるんだ地面でも滑りにくく、泥や小石が入りにくいという利点があります。

また、「板草履」は草履の芯として薄板を使用しており、「草履芯」とも呼ばれています。一般的には2枚で一組となります。

健康への影響

草履は、靴とは異なり足を包み込まないため、足の汗が乾燥しやすく、足白癬などの感染症にかかりにくいとされています。日本人が草履を普段履いていた時代には、足白癬の報告がほとんどありませんでした。脚に負担をかけない草履の恩恵が、健康にも寄与していたのです。

さらに、発展途上国のケニアでは、脚を守るために岸田袈裟という日本の栄養学者が現地の材料で草履製作を導入し、高い評価を得ています。

その他の情報

よく似た形のリゾート用履物としてビーチサンダルがあり、沖縄では「島ぞうり」とも呼ばれています。江戸時代には金剛草履が製造されており、その売買スタイルから「二束三文」が生まれるなど、言葉の由来にもなっています。

また、草履に関する迷信として、「鼻緒が切れると凶兆」とされることがあります。かつて、葬列に参列する者は新たに草履を用意し、墓場で悪霊を避けるためにその鼻緒を切る習慣があったため、それが迷信に繋がったと考えられています。

草履は時代や用途によって変化しつつも、日本の文化に深く根付いた履物であることが理解できるでしょう。

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