萌えアニメ

萌えアニメとは

萌えアニメとは、アニメのジャンルの一つであり、ストーリーよりもキャラクターを重視し、個性の異なる複数のキャラクターたちの魅力で作品を牽引し、視聴者の萌えを刺激するようなアニメを指します。かわいらしい女性キャラクターが登場するなど、「萌え」を刺激されるアニメ全般を指しますが、「萌え」という語の定義は千差万別であり、この用語の意味するところは使用者の主観に依拠しているため、その定義は極めて曖昧です。

概要

「萌えアニメ」はアニメの類型の一つとして確立されており、2000年代には深夜帯での萌えアニメの増加が顕著になりました。2009年時点では、関東圏で放送されている深夜アニメの半数以上を萌えアニメが占めていました。

「萌え」は主として微細な要素に求められることが多く、制作の側からは、そうした点を守らなければならないという点で縛りのあるジャンルであるとも言われます。具体的には登場人物の容姿（アホ毛といった外見特徴や、キャラクターデザインが萌え絵の範疇に入るなど）や、仕草や性格などの設定であったり、キャラクター同士の人間関係といったことが重視されます。萌えアニメではこのような設定から外れた自由な描写が忌避される半面、魅力的なキャラクターデザインと特定の属性描写などを多発するエピソードが重視され、物語のバランスやリアリティなどはあまり重要視されないこともあります。ストーリー性の薄さをキャラクターの魅力で十分に補えている作品が高く評価される一方、売れ筋の萌え要素を寄せ集めただけのような作品が数多く作られてはすぐに忘れ去られていくという状況もあります。萌えアニメはマーケティングの方法論が通用しにくく、広告戦略やブランドイメージで流行を生み出そうとしても成功しないことが多いとされます。

表現の傾向

「萌え」というスラングが指し示す対象は幅広く、架空の人物やアイドルに対してのみならず、「工場萌え」のように人間の姿をしていないものに対して用いられることもあります。もっとも、「萌え」というスラングが用いられ始めた当初は、主に美少女キャラクターに対する表現であり、「萌えアニメ」とは、おおむね魅力的な女性キャラクターが大勢登場する作品の形容に用いられます。全く女性キャラクターが登場しない作品が「逆萌えアニメ」などと形容された例もあります。一方で美少女キャラクターを物語の中心に据えているにもかかわらず「萌えアニメではない」とされる作品もあり、また女児向けの作品は、大勢の女性キャラクターが活躍する作品であっても「萌えアニメ」に含めるか否かで判断が分かれます。

「萌え」には軽い性的な要素が含まれることがあり、「萌えアニメ」が、「美少女やおっぱいがたくさん出てくるアニメ」というイメージで語られることもあります。深夜帯の萌えアニメではしばしば海水浴や温泉を題材にしたエピソードや、コマ送りしなければ確認できないようなパンチラ、性的なハプニングをほのめかす演出など、時にはテレビの放送コードに迫ることもある性的描写が用いられ、その辺りまでが「萌え」描写の範疇であるとされます。

一方、エロティックな描写は必ずしも萌えの必要要素ではないとし、逆に過剰すぎる性的描写は「萌え」ではないものと見なしたり、「萌エロ」などと呼ばれて区別する意見もあります。深夜アニメの中にはあざとい性描写のために規制にかけられる作品もありますが、このようにテレビアニメとして放送できないようなものは「エロ」「萌エロ」に分類されます。一方で、エロと萌えは同一視されることもあるため、女性キャラクターの可愛らしさを売りにしつつもエロティックな要素がほとんど見られない作品を「萌えアニメ」と位置づけるかどうかは、使用者によって意見が分かれることもあります。

萌えアニメ前史

美少女を題材にした作品はアニメに限らず、古くから存在していました。1980年代には、魔法少女アニメが成人男性にも人気を博し、「アニメの美少女キャラクターにのめり込むおたく」の存在が認知されはじめました。家庭用ビデオデッキの普及に伴い、OVAで露出度の高いコスチュームをまとった美少女キャラクターが活躍するアニメ作品が多く作られました。

1990年前後から「萌え」という言葉が使われ始め、『美少女戦士セーラームーン』シリーズは少女だけでなく男性アニメファンも魅了しました。1990年のテレビアニメ『ふしぎの海のナディア』をルーツの一つに挙げる意見もあります。ガイナックスは『新世紀エヴァンゲリオン』を手がけ、登場人物の人気から萌えブームを決定づけることになりました。

2000年代には、ライトなアニメファンを対象にした「萌え」作品が人気を得ました。2001年の深夜アニメ『シスター♥プリンセス』は、アニメ関係者に動揺を与え、同作のような作品が主流になっていくのではないかと予感させるものでした。ゆるい雰囲気の萌えアニメの広まりは深夜アニメの隆盛とも無関係ではありませんでした。

萌えアニメ史

2000年代後半からは『らき☆すた』、『けいおん!』などの女性キャラクターが中心のアニメが登場しました。2010年代には萌えを意識した『まんがタイムきらら』系のマンガがアニメ化され、萌えを意識したアニメが増加しました。BS11やBSフジが深夜アニメ全般の放送や製作委員会への参加にも積極的となり、地上波に代わってBSで萌えアニメの放送も増加しました。

経済効果

2005年頃には萌えアニメの急激な増加やその経済効果が話題になりました。萌えアニメの舞台のモデルとなった実在の土地が聖地巡礼の対象となったり、地域おこしの題材となったりするなど、地域振興と結びついた例もあります。

萌えアニメ専門誌

1999年に創刊された『メガミマガジン』は萌えアニメを中心に扱っており、この分野では長い歴史を持っています。2009年に創刊された『娘TYPE』も萌え系の作品を中心に扱っています。

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