蒼穹紅蓮隊

『蒼穹紅蓮隊』とは

1996年に日本のゲームメーカー、ライジングが開発し、エイティングからアーケード向けにリリースされた縦スクロールシューティングゲームです。日本国外では『Terra Diver』というタイトルで知られ、そのキャッチコピー「死角なし!」が示すように、独特のゲームシステムが特徴となっています。

退廃と隣り合う近未来世界

物語の舞台は西暦2057年。宇宙開発を主要事業とする巨大企業「尽星」の私設武装部隊「蒼穹紅蓮隊」が、敵対するライバル企業やテロ組織と激しい戦闘を繰り広げます。

尽星は、かつては国家の宇宙開発事業団の下請けから始まりましたが、効率的な経営と積極的なM&Aにより、わずか20年あまりで世界有数のコングロマリットへと急成長を遂げました。この発展を牽引したのは、現会長であるミアマ氏の卓越した手腕です。彼は会長職を譲った後も、自ら宇宙往還機を操縦するなど、精力的に業務を続けています。

蒼穹紅蓮隊は、尽星の私設自衛部隊「JDF」の通称です。危険な作業の代行や、顧客からの依頼による紛争への介入など、多岐にわたる任務を遂行する何でも屋のような部署です。プレイヤーは、この蒼穹紅蓮隊に所属する個性豊かな3人のパイロットから一人を選び、戦場へと向かいます。

本作の最大の特徴は、その世界観にあります。例えば、東京上空での激しい空中戦が新聞で日常的なニュースとして報じられるなど、平穏な日常と危険な戦場が驚くほど近くに存在する、特異な近未来が描かれています。

独自のゲームシステム

本作の操作は、一般的なシューティングゲームと同様に8方向レバーでの移動と、ショット、ウェブ切替、ボムの3ボタンを使用します。

メインショット

ステージ中に登場する特定のキャリアを破壊すると出現するパワーアップアイテムを取得することで、メインショットの性能が向上します。最大で6段階まで強化可能で、ミスによってパワーダウンしますが、素早くアイテムを回収することで元の状態に戻しやすいシステムとなっています。特定の段階に達すると、アイテム取得時にボーナススコアが得られるようになり、連続で取り続けることで高得点が狙えます。

N.A.L.S. (全方位照準固定システム)

本作の根幹をなすシステムの一つです。ショットボタンを押し続けると、自機の周囲にワイヤーフレーム状の「ウェブ」が展開されます。このウェブ内に捉えられた敵は、地上や空中など高低差に関係なく自動的にロックオンされ、ボタンを離すことで強力な誘導弾が一斉に発射されます。ウェブの展開範囲や同時にロックできる最大敵数は、選択した自機によって異なります。また、ボタン操作でウェブの形状を拡散型と集中型の2種類に切り替えることも可能です。

ただし、N.A.L.S.展開中はメインショットが使用できなくなるため、メインショットでなければ破壊できない敵弾に対処できません。また、ボス戦ではロックオンできるターゲット数が限られるため、N.A.L.S.だけでは攻略が困難な場面も多く、メインショットとの使い分けが重要となります。戦略的な要素として、N.A.L.S.で同時に4機以上の敵を撃破すると得点に倍率がかかりますが、2機以下の場合には得点が半減します。

ボム

ボムは緊急回避としてだけでなく、攻撃的な用途でも非常に有効です。N.A.L.S.で敵をロックオンした状態でボムを使用すると、その標的に向かってボムが精密に誘導され、大ダメージを与えることができます。ボム発射中は自機が無敵状態になります。最大7発までストック可能で、最大ストック数を超えてボムアイテムを取得するとボーナス点が得られます。

ボムで敵を倒すと得点が大幅に減少するというデメリットがありますが、これにより初心者はボムを多用して生き残るプレイ、上級者はボムの使用を抑えて高得点を狙うプレイと、異なるスタイルで楽しめる設計になっています。

個性的な自機とパイロット

プレイヤーは、それぞれ異なる性能を持つ3種類の自機（プレイステーション版では4種類）から選択できます。

S.O.Q-004「屠竜」：汎用性に優れ、N.A.L.S.で最大6機を捕捉可能。パイロットは防衛2課課長の八指多薫。若いながらも高い反応速度を誇り、部下からの信頼も厚い女性です。
S.O.Q-010「紫電」：軽量で機動性が高く、ウェブ範囲も広いですが火力は控えめ。N.A.L.S.で最大7機を捕捉可能。パイロットは新人ながら高い操縦技術を持つ朏良太。負けず嫌いな性格で、会長の隠し子という秘密を抱えています。
S.O.Q-025「鵬牙」：推進力と火力は高いものの、運動性が悪く操作に癖があります。N.A.L.S.で最大8機を捕捉可能。パイロットは国村リカ。優れた操縦技術を持ちながらも、歯に衣着せぬ物言いが原因で左遷された経験を持つ、八指多の親友です。
S.O.Q-026「黄武」：プレイステーション版で追加された機体。既存の3機の長所を取り入れたバランス型で、N.A.L.S.で最大9機を捕捉可能。パイロットは下新居田哲生。がっしりとした体格のベテランパイロットです。

各機体ごとにN.A.L.S.のウェブ形状（拡散型・集中型）の名称も異なり、その特徴が表現されています。

家庭用ゲーム機への移植

本作は、アーケード版のリリース後、家庭用ゲーム機にも移植されました。

1997年には、セガサターン版が発売されました。アーケード版がセガサターン互換の基板で開発されていたため、非常に高い移植度を誇り、詳細な設定変更や様々な特典が追加されました。後に廉価版も登場しています。

同年には、プレイステーション版『蒼穹紅蓮隊 黄武出撃』としても移植されました。このバージョンでは、新たな自機「黄武」とそのパイロット、追加ステージなどが収録され、長沢美樹氏によるナレーションが加わるなど、アーケード版にはないオリジナル要素が多く盛り込まれています。ただし、一部で処理落ちが発生する場面も見られました。その後、2003年にはハムスターより廉価版がリリースされています。

独特の世界観と戦略性の高いゲームシステムを持つ『蒼穹紅蓮隊』は、移植版も含め、多くのシューティングゲームファンに記憶される作品です。本作は、他のゲーム作品とのコラボレーションも行っており、『ダライアスバースト クロニクルセイバーズ』にはダウンロードコンテンツとして自機が登場しています。

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