血液型占い

血液型占いとは

血液型占いは、日本で広く知られる、ABO式血液型を分類の基礎とする占いです。特定の血液型と人間の性格や運勢を結びつけるものとして普及しましたが、科学的な裏付けは一切ありません。この占いは日本独自に発展した文化的な現象と言えます。

この占いは、西洋占星術や四柱推命のように確立された技法があるわけではありません。しかし、分類対象がA、B、O、ABの四つと限られているため、それぞれの特徴を短時間で紹介できる利点があり、かつてはテレビ番組や雑誌の占いコーナーで頻繁に取り上げられていました。中には、星座占いなど他の占術と組み合わせて利用されるケースも見られました。

歴史的な経緯

血液型による性格分類の考え方の源流は、血液型が医学界で発見された初期に遡ります。当時、ヨーロッパでは人種間の血液型分布の違いが注目され、特定の血液型に対する偏見が生じました。特に、ヨーロッパにA型が多く、極東出身者にB型が多かったことから、B型に対する否定的な見方が生まれ、当時の「黄禍論」とも結びついて人種差別的な文脈で語られることもありました。偏見の始まりは日本ではありません。

日本においては、1910年代に医学者が血液型と人種、さらには性格との関連について論じるようになります。特に教育学者の古川竹二が1927年に発表した「血液型気質相関説」は、後の血液型占いの原型となりました。古川はアンケート調査に基づき、血液型と気質の関連を唱え、『血液型と気質』という著書も出版しましたが、当時の学界での評価は賛否が分かれ、やがて衰退しました。その後、能見正比古らが同様の考え方を発展させ、「血液型人間学」として再び広めることになりますが、その学説も科学的な検証には耐えませんでした。

血液型相性占いも広く行われており、特に女性の間で恋愛や結婚相手選びの参考とされることがあります。現代において遺伝的・免疫的な相性を容易に測ることができない中で、嫌悪刺激に敏感な女性がそれを推測する第一段階の手がかりとしている可能性を示唆する研究もあります。

一方で、2000年代以降には、血液型と特定の病気（胃がん、膵臓がん、脳卒中など）のリスクや、重傷を負った際の死亡率などとの関連性について、医学的な研究が世界中で行われるようになりました。これは、血液型を占いの根拠とするものではなく、医学的な統計研究です。

なぜ「当たる」と感じるのか

科学的な根拠がないにも関わらず、多くの人が血液型占いを「当たる」と感じてしまうのには、いくつかの心理的な要因が関係しています。

バーナム効果: 血液型占いの性格描写は、「感情の起伏がある」「時々落ち込むことがある」といった、誰にでも当てはまるような、あいまいかつ一般的な内容で書かれていることが多いです。読者は、このような記述を自分だけに向けられた正確な分析だと誤解し、納得してしまいやすくなります。
確証バイアス: 例えば、「B型はおおらかだ」という血液型に関する先入観を持っていると、その血液型の人のおおらかな行動が特に目につくようになります。逆に、おおらかでない行動をとっていても、それは「珍しい」「たまたま」として見過ごしてしまいがちです。自分の信念や期待を裏付ける情報を優先的に収集・解釈し、それに反する情報を軽視する心理的な傾向です。
* 予言の自己成就: 周囲から「あなたは〇〇型だから△△な性格だね」といった情報を繰り返し聞かされることで、無意識のうちにそのイメージに沿った行動をとるようになることがあります。その結果、元々は根拠がなかった血液型による性格付けが、本人の行動変化によって現実のものとなったかのように感じられる現象です。

これらの心理効果は、血液型占いに限らず、様々な占いや診断で「当たる」と感じる仕組みとして知られています。

ブラッドタイプ・ハラスメント（ブラハラ）

ブラッドタイプ・ハラスメント（ブラハラ）とは、血液型を根拠に他者の性格や能力を決めつけたり、否定的な評価をしたりして、相手を不快にさせる言動を指します。これは「blood type」と「harassment」を組み合わせた和製英語で、近年社会問題として認識されるようになりました。

血液型といった本人の選択できない遺伝情報を根拠に人間を評価し、否定的なレッテルを貼る行為は、差別行為につながる可能性があります。これは人種差別と同じ構造を持っており、歴史的にも血液型と性格・能力を結びつける考え方が、特定の集団を差別するために利用された側面があります。学校や職場などでブラハラが起こると、いじめや人間関係の悪化、不適切な人事判断など、深刻な問題に発展する恐れがあります。日本では、血液型に基づく決めつけや人格否定が差別行為にあたるという認識が、まだ十分浸透していないという問題が指摘されています。

メディアでの扱いとその変化

かつて、テレビ番組は血液型と性格の関連説を頻繁に取り上げ、一般社会への浸透に大きな影響を与えました。番組によっては、科学的な根拠がないにも関わらず、制作側の都合で占いの結果を創作したり、特定の血液型を肯定的に、別の血液型を差別的に扱ったりするケースもあったとされます。

このような状況に対し、放送倫理・番組向上機構（BPO）は2004年に、「血液型によって人間の性格が規定されるという見方を助長しないよう」求める声明を発表しました。BPOは、判断能力が未熟な子供たちが、血液型が性格を決定するという誤った固定観念を持つ危険性を指摘しました。この声明を受け、多くのテレビ番組で血液型占いコーナーが終了したり、テロップ表示を取りやめたりするなど、扱いが大きく変化しました。例えば、『情報プレゼンター とくダネ!』や『ちちんぷいぷい』など、人気番組でも関連コーナーが終了しています。

一部には「科学的に否定されたわけではない」として血液型性格分類の扱いを正当化する意見もありましたが、医学的・心理的な裏付けがない情報をあたかも事実のように流布し、社会に誤解や偏見、差別意識を植え付けたメディアの責任が問われることとなりました。現在では、テレビ番組で血液型と性格を結びつける話題が扱われることは大幅に減少しましたが、一部の週刊誌などでは依然として見られることがあります。

血液型占いは、科学的根拠のないエンターテイメントとして楽しむ分には問題ありません。しかし、その情報を他者への決めつけや評価、そして差別やハラスメントに繋げることは、社会的な問題を引き起こすことを理解しておく必要があります。

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