黄禍論

黄禍論の概要

黄禍論（こうかろん）は、19世紀後半から20世紀前半にかけて、欧米諸国において日本人を主な脅威と見なす思想や理念が広がった現象を指します。この概念は、日[[清戦争]]（1894年）の後、日本が中国大陸に進出したことがきっかけとなり、アジア人への恐れや偏見が一層強化された結果、形成されました。特に、ドイツ帝国の皇帝ヴィルヘルム2世が広めた「黄禍」というフレーズは、この思想が広まる大きな要因となりました。

歴史的背景

黄禍論は、1895年頃から広まり始めました。具体的には日[[清戦争]]と、その後の日本の軍事的成功、特に日露戦争（1904年〜1905年）によって、欧米諸国の中で日本人や中国人に対する懸念が高まったのです。この時期、植民地拡大を進める列強国の中で、日本の台頭は特に警戒され、危険視されました。

特にフランスでは、1896年頃からこの概念が言及され始め、新聞や文献を通じて広まりました。ヴィルヘルム2世は「黄禍」という言葉を使用し、日本と中国の人々がアジアでの力を増すことに対する恐怖を鼓舞しました。義和団の乱（1900年）以降は、他の欧米諸国でもこの思想が強化されました。さらに、日本が日露戦争で勝利を収めたことで、欧州全体にこの恐れが広がることとなりました。

一部の日本人に対する偏見

近代の黄禍論では、主に中国人や日本人が「黄色人種」として対象となりました。アメリカやオーストラリアでは特にこの考え方が顕著でした。1882年に制定された中国人排斥法や、1924年の排日移民法などは、こうした人種差別的な動きの結果とされています。これらの法令は、経済競争における黄色人種への嫌悪感や恐れから生まれました。

欧米における黄禍論

イギリスやアメリカ合衆国では特に、労働市場における競争が黄色人種への恐れを増幅させました。19世紀半ば、白人労働者の間でアジア系移民に対する反発が高まり、多くの都市で反中・反日感情が広まりました。これらの感情は、最終的には移民制限や排斥に繋がる立法措置を生むことになったのです。

また、オーストラリアでも1860年代から白人労働者の間で反中キャンペーンが展開され、労働組合が主導するかたちで黄色人種排斥が進められました。国家政策にも影響を与え、日英同盟を結ぶイギリス本国の外交政策と相反する動きが見られました。

反論と視点の変化

日本側からの反論もありました。岡倉天心は西洋の帝国主義が他国文化を侵食していることを指摘し、逆に「白禍」として西洋の行動を批判しました。このような視点は、徐々に世界各地で認識が広がり、偏見に対する反発が強まることとなりました。

まとめ

黄禍論は、19世紀から20世紀初頭にかけての歴史において、アジア系移民への偏見と恐れを反映した一連の思想です。その影響は今なお根強く残っており、国際交流や人種間の関係といった現代の課題においても、未だに同じような偏見や誤解が存在することを考える必要があります。このような歴史を振り返り、平等で相互理解のある社会を構築する一助としたいものです。

もう一度検索