西尾市岩瀬文庫

西尾市岩瀬文庫

西尾市岩瀬文庫は、愛知県西尾市亀沢町の鶴城公園に位置する市立博物館です。隣接地には西尾市立図書館があり、六万石くるりんバスの図書館・岩瀬文庫西停留所から徒歩でアクセスできます。

歴史

岩瀬文庫は、西尾市出身の実業家・岩瀬弥助によって1908年（明治41年）に私立図書館として開館しました。岩瀬は書籍の収集に情熱を注ぎ、貴重な古典籍を数多く収集しました。1919年（大正8年）頃には、西原吉治郎の設計による煉瓦造の書庫が完成し、蔵書を安全に保管する体制が整えられました。

1930年（昭和5年）に岩瀬弥助が死去すると、遺言に基づき財団法人岩瀬文庫が設立され、運営を引き継ぎました。しかし、戦後の社会情勢の変化により、財団法人による運営が困難となり、1955年（昭和30年）に西尾市が蔵書を購入し、土地と書庫の寄贈を受け、公立図書館である西尾市立図書館岩瀬文庫として再出発しました。

その後、1967年（昭和42年）には岩瀬文庫の図書館機能を補完する西尾市郷土館が開館し、一体的に運用されました。1983年（昭和58年）には本格的な図書館である西尾市立図書館が開館し、岩瀬文庫は図書館としての役割を終え、貴重な古典籍を保存・公開する施設へと移行しました。

1999年（平成11年）には岩瀬文庫書庫が国の登録有形文化財に登録され、その歴史的価値が認められました。そして2003年（平成15年）には、新たに本館と収蔵庫を建設し、博物館「西尾市岩瀬文庫」として開館しました。本館は若山滋と青島設計の張奕文によって設計され、プレキャスト・プレストレストコンクリート造の地上2階・地下1階建ての建物で、同年には「愛知まちなみ建築賞」を受賞しています。

2007年（平成19年）には博物館法に基づく博物館として登録され、2008年（平成20年）には創立100周年を迎えました。記念事業として「全国文庫サミット」が開催され、「岩瀬弥助記念書物文化賞」が創設されました。2016年（平成28年）には皇太子徳仁親王が岩瀬文庫を視察し、2017年（平成29年）には皇太子が記者会見で訪問時の印象を語られました。

特色

岩瀬文庫は約8万冊の蔵書を有し、古典籍の宝庫として知られています。貴重な古文書や版本、写本などが所蔵されており、日本の歴史や文化を研究する上で貴重な資料となっています。毎年10月には「にしお本まつり」が開催され、多くの人々が訪れます。

主な収蔵品

後奈良天皇宸翰般若心経（参河国） - 国の重要文化財
『本草図説』 - 江戸時代の高木春山による博物図鑑
『本草図譜』 - 江戸時代の岩崎灌園による植物図鑑の一部
柳原文庫本 - 柳原伯爵家の旧蔵本
寺津八幡書庫本 - 渡辺政香が書写、収集した寺津八幡社の旧蔵本
羽田文庫本 - 羽田野敬雄が創設した羽田文庫旧蔵書の一部

岩瀬文庫は、古典籍に触れ、歴史と文化に思いを馳せることのできる貴重な場所です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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