諸口あきら

諸口あきら（もろぐち あきら、本名：南 弘人（みなみ ひろと）、1936年5月21日 - 2017年9月10日）は、日本の芸能界において、稀有な存在感を放ったマルチタレントでした。俳優、ラジオパーソナリティ、カントリーシンガー、評論家、そして書家と、その活動領域は多岐に渡ります。

福岡県門司市出身の諸口氏は、多摩美術大学油絵学科を卒業後、俳優としてキャリアをスタートさせました。「茂呂 弘人」や「諸口 旭」の名義で数々の作品に出演し、着実に経験を積んでいきます。1960～70年代にかけては、俳優業と並行して、カントリーシンガーとしての活動を開始。独特の才能と魅力で人気を博し、一世を風靡する存在となりました。

しかし、諸口氏の真価を発揮したのは、ラジオパーソナリティとしての活躍でした。1970年代には、関西を中心に数多くのラジオ番組に出演。KBS京都ラジオの『日本列島ズバリリクエスト』や、毎日放送ラジオの『MBSヤングタウン』など、人気番組への出演を通して、その名を全国に知らしめました。

その軽妙なトークと幅広い知識、そして時に鋭い視点から繰り出される評論は、多くのリスナーを魅了しました。特に、1984年から2002年まで続いた毎日放送ラジオの『諸口あきらのイブニングレーダー』は、関西地方を代表する人気番組となり、高い視聴率を記録しました。

この番組では、歯に衣着せぬ物言いで時事問題や社会問題を語り、独自の視点から鋭い批評を展開しました。その一方で、リスナーからの相談にも親身になって応え、温かい人柄も多くのリスナーに支持されました。

『イブニングレーダー』終了後も、毎日放送ラジオで様々な番組を担当。また、書家としても個展を開き、カントリーシンガーとしての活動も継続するなど、精力的に活動を続けました。

諸口氏の才能は、ラジオだけに留まりません。テレビ番組の司会も経験し、NHK総合テレビの『世界史漫遊』や東京12チャンネルの『独占！おとなの時間』など、バラエティに富んだ番組で活躍しました。特に沢たまき氏と共演した『独占！おとなの時間』は、深夜番組ながら高い視聴率を獲得し、大きな話題となりました。

映画のナレーションも担当し、東映制作の『沖縄やくざ戦争』では、その落ち着いた声で作品に深みを与えました。

諸口氏は、1982年にホテルニュージャパン火災で恩人を亡くしたことがきっかけで海外生活を経験しますが、帰国後もラジオ界に復帰。その間に培った経験と人脈が、彼の後年の活躍を支えました。

九州出身ながら、独特の江戸っ子風口調がトレードマークだった諸口氏。その親しみやすい語り口と、誰からも愛される人柄は、多くの共演者やリスナーに深い印象を与えました。

2017年9月10日、肺気腫のため逝去。81歳でした。その死は、多くの関係者やリスナーに深い悲しみをもたらしました。しかし、彼の残した功績と、数々の名場面は、これからも多くの人の心に生き続けることでしょう。

諸口あきら氏は、単なるタレントという枠を超え、ラジオというメディアの可能性を拡げ、リスナーに深い感動と喜びを与え続けた、真のエンターテイナーでした。その多才さと人となりは、多くの人の心に深く刻まれています。

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