越生梅林

越生梅林：関東三大梅林の一つ、歴史と自然が織りなす梅の楽園

埼玉県入間郡越生町に広がる越生梅林は、水戸偕楽園、熱海梅園と肩を並べる「関東三大梅林」の一つとして知られています。越辺川沿いに広がる約2ヘクタールの梅林には、越生野梅などの貴重な古木を含む約1000本の梅が咲き誇り、2万本にも及ぶ梅の壮大な景観を形成しています。

その歴史は南北朝時代まで遡ります。武蔵国小杉村に天満宮を分祀する際に梅が植えられたのが起源とされ、古くからこの地では梅の栽培が盛んに行われていました。『新編武蔵風土記稿』にも、津久根村（現在の越生町周辺）で梅の生産が盛んであったことが記されています。江戸時代には、梅の実を梅干しとして江戸に送っていたという記録も残っています。

明治時代に入ると、越生梅林は観光地として注目を集めるようになり、1900年には地元有志によって「古梅林保勝会」が結成され、梅林の保全活動が始まりました。翌年には、奈良県の月ヶ瀬梅林になぞらえ「新月ヶ瀬豊楽梅林」と名付けられ、1940年には埼玉県指定名勝に指定されています。その後、1955年の梅園村の越生町への編入を経て、1957年に現在の「越生梅林」と改称されました。東武東上線越生線沿線の案内には、「山紫水明の環境は月ヶ瀬に似て此の名あり」と紹介されるなど、その美しい景観は広く知られていました。2000年には、埼玉新聞社の「21世紀に残したい・埼玉ふるさと自慢100選」にも選ばれています。

毎年2月中旬から3月下旬にかけて開催される「梅まつり」は、多くの観光客で賑わいます。梅林内には全長253メートルのミニSLの線路が敷設されており、設定日にはかつて八高線で走っていた国鉄9600形蒸気機関車の10分の1モデル（日本工業大学付属東京工業高等学校機械科制作）が運行されます。また、郷土芸能の披露や、近年ではライトアップイベントなども行われ、五感を満たす体験を提供しています。

アクセスは、東武越生線またはJR八高線「越生駅」から川越観光バスを利用、または関越自動車道、圏央道からもアクセス可能です。

越生梅林は、歴史と自然が調和した、まさに日本の原風景と言える場所です。春の美しい梅の花、そして、それを取り巻く歴史と文化に触れることで、心豊かなひとときを過ごすことができるでしょう。周辺には、梅林のすぐ近くで醸造されている清酒「越生梅林」や、梅の蜜を原料とした医薬飴が起源とされる「一里飴」など、地元ならではの特産品も楽しめます。

交通アクセス

公共交通機関: 東武越生線（東武東上線坂戸駅乗り換え）・JR八高線「越生駅」から、川越観光バス「黒山行き」梅林入口バス停下車徒歩1分（梅まつり期間中は、休日を中心に梅林入口直行臨時便あり）。
道路: 関越自動車道「東松山インターチェンジ」から15km、「鶴ヶ島インターチェンジ」から16km、首都圏中央連絡自動車道「圏央鶴ヶ島インターチェンジ」から15km

参考文献

「津久根村」『新編武蔵風土記稿』巻ノ174入間郡ノ19、内務省地理局、1884年6月。

関連項目

梅園村（越生町に合併する前の村名）
清酒「越生梅林」（越生梅林近くの酒蔵 (有) 佐藤酒造店で醸造）
一里飴（越生梅林で採れた梅の蜜を原料とした医薬飴が起源）

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