車両輸送

車両輸送：多様な輸送手段と方法

車両輸送は、物流においてトラックなどによる陸上輸送全般を指す一方で、鉄道車両や自動車といった車両そのものの輸送も意味します。本稿では、国内外の事例を交えながら、車両輸送の多様な様相を解説します。

陸送：道路と鉄道による輸送

道路輸送

中国では、鉄道、道路、水運、航空など多様な輸送手段が存在しますが、道路輸送が圧倒的なシェアを占めています。1993年の実績では、旅客輸送の86%、貨物輸送の76%を担っていました。ドイツでもトラック輸送が約8割を占めるなど、道路輸送は世界的に重要な役割を果たしています。

自動車の新車輸送では、キャリアカーと呼ばれる専用の運搬車が使用されます。長距離輸送には自動車運搬船やRO-RO船も利用されます。大型トラックやバスは、仮ナンバーを付けて自走する場合もあります。鉄道による自動車輸送は、かつては車運車という専用の貨車が使用されていましたが、現在ではコンテナ輸送が主流です。

鉄道輸送：甲種輸送と乙種輸送

鉄道車両の輸送は、大きく分けて「甲種輸送」と「乙種輸送」の2種類に分類されます。

甲種輸送

甲種輸送は、鉄道車両をその車輪を使用して貨物列車として輸送する方法です。新車の納品や中古車両の譲渡、私有貨車の回送などが該当します。JR貨物などの貨物鉄道事業者が、機関車牽引で輸送します。

甲種輸送の手続きは複雑で、発着駅、車両の仕様、輸送希望日などを記載した申込書をJR貨物に提出する必要があります。JR貨物は関係各所と協議し、輸送可能であれば承認します。輸送日は、JR各社間の調整会議で決定されます。輸送前には、JR貨物の社員が輸送検査を行い、「特大貨物等検査票」を発行します。輸送中の最高速度は、通常75km/h程度に制限されます。

新幹線車両など、軌間が在来線と異なる車両は、仮の台車を使用して輸送されることがあり、陸送も併用されます。また、車両メーカーの社員が「付添人」として同乗し、車両の状態を確認します。近年では、JR貨物の線路使用料の問題から、道路輸送への移行が進んでいる傾向にあります。

甲種輸送は、鉄道車両だけでなく、車両構体や保線機械、輸出用車両なども対象となります。また、JR旅客会社の車両が自走できない場合にも利用されます。

乙種輸送

乙種輸送は、鉄道車両を貨車に載せて輸送する方法です。主に路面[[電車]]車両などが対象となります。現在では、輸送に適した貨車が減少したため、日本国内ではほとんど見られません。欧米などでは、専用運搬貨車を保有する事業者も存在します。

甲種輸送と乙種輸送の違い

甲種輸送は車両自身の車輪を用いて輸送するのに対し、乙種輸送は貨車に積載して輸送します。甲種輸送以外の鉄道車両輸送が乙種輸送となります。丙種輸送という分類はありません。

甲種輸送と配給列車

甲種輸送と似た輸送方法に「配給列車」があります。これは、鉄道事業者が自社の車両を自社線内で輸送するもので、貨物列車である甲種輸送とは性格が異なります。新造車両の工場からの輸送では、甲種輸送の後、配給列車で車両基地まで回送されるケースがあります。

私鉄線内輸送

私鉄向け車両は、JR線などとの接続駅まで甲種輸送された後、私鉄の機関車などで車両基地まで輸送されます。近年は、接続駅から自走で車両基地へ搬入する例も増えています。この場合、速度は25km/h程度に制限されます。

海上輸送

海上輸送は、車両の大きさや重量の制限が緩いため、複数台の輸送や長距離輸送に適しています。艀（はしけ）や貨物船、列車専用船などが利用されます。近年では、トレーラーごとカーフェリーに積み込んで輸送するケースも増えています。

航空輸送

航空輸送は、An-124などの大型輸送機を用いて行われます。主に、緊急性が高い場合や、地理的な制約がある場合に利用されます。過去には、地下鉄車両や路面[[電車]]などが空輸された事例があります。

まとめ

車両輸送は、多様な輸送手段と方法によって行われています。それぞれの輸送方法には、メリット・デメリットがあり、輸送する車両の種類、距離、時間、コストなどを考慮して最適な方法が選択されます。今後も、物流の効率化や環境問題への配慮から、新たな輸送方法の開発や既存方法の改善が進むと予想されます。

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