私有貨車

私有貨車とは

私有貨車とは、鉄道事業者以外の一般企業などが所有する貨車のことを指します。これらの貨車は、各鉄道事業者に車籍を編入・管理されることで、鉄道網での運行が可能になります。元々は国が所有していた貨車に対し、民間企業が所有する貨車を区別するためにこう呼ばれるようになりました。ただし、私鉄が所有する貨車は通常この範疇には含まれません。また、現在のJR貨物が所有する貨車も同様です。一方で、国や地方公共団体の機関であっても、鉄道事業を専門としない機関が所有する貨車は、私有貨車として扱われます。

積荷を降ろした状態の空車を回送する際は、甲種車両輸送として扱われるのが特徴です。このため、通常は積荷を発送しない駅でも発送貨物がある場合があります。私有貨車は、特定の荷主が特定の積荷を特定の区間で運ぶために使用されることが多く、そのため積荷の特性に合わせた特殊な形状や機能を持つものがほとんどです。代表的な車種としては、タンク車、ホッパ車、大物車などがあります。

経済活動の多様化に伴い、様々な輸送形態が存在するため、汎用的な有蓋車、無蓋車、コンテナ車は原則として私有貨車の製作は認められていません。しかし、例外的に製作されることもあります。

私有貨車の主な車種

タンク車
私有貨車の中で最も多くを占めるのがタンク車です。石油類、高圧ガス、セメントなどの粉粒体など、様々な液体や粉体を輸送するために使用されます。
ホッパ車
セメント、鉱石などの粉粒体を輸送するために使用されます。1952年に小河内ダム建設用に製作されたタキ2200形が初の私有ホッパ車です。
石炭車
大正から昭和初期にかけて、足尾銅山の泥鉱輸送用としてセ1形・セ600形の2形式のみが存在しました。当時はホッパ車という車種がなかったため、石炭車に分類されていました。
大物車
変圧器や発電機など、大型の重量物を輸送するために使用されます。中には新幹線車両の輸送に使われるものもあります。
車運車
かつては自動車メーカーが新車輸送に使用していましたが、1960年代に国鉄のク5000形が標準化されたため、新車輸送用としては一旦途絶えました。その後、ピギーバック輸送用の貨車が製作されましたが、2002年までに全廃されました。
長物車
現在はレール輸送用のJR貨物チキ5500形のみが存在します。かつてはコンテナ車扱いになると運賃が割高になるため、専用コンテナ輸送のために長物車として扱われていたものもありました。
コンテナ車
原則として私有貨車としてのコンテナ車の製作は認められていませんが、例外的にさいたま新都心の建設残土輸送に使用されたコキ104形5000番台が製作されました。輸送終了後はJR貨物に譲渡されています。
無蓋車
現在は亜鉛精鉱輸送用のJR貨物トキ25000形のみが存在します。かつては大型板ガラス輸送用のトキ80000形や私鉄買収車として軽便線用のケト900形が存在しました。
有蓋車
汎用貨車であるため、私有貨車の製作は原則認められていませんが、例外的に航空機用の爆弾及び魚雷輸送用にワキ700形が製作されました。
鉄製有蓋車
袋詰めセメント輸送用のテキ1形とテキ200形が存在しましたが、運用区間を限定されていました。

その他の私有車

貨車に限らず、私有客車、私有電車、私有気動車も存在します。例えば、かつては郵便車が郵政省の所有であったり、日本銀行が所有する現金輸送用荷物車もありました。また、山形新幹線の400系やJR北海道のキハ261系などにも第三セクターの私有車が存在します。

機関車についても、専用線への乗り入れや専用輸送のために、民間企業が所有する機関車を鉄道事業者に車籍編入するケースがあります。これらは「私有機関車」と呼ばれます。また、メーカーが試作した機関車に国鉄・JRの車籍が与えられたケースもあります。

私有貨車は、日本の物流を支える上で重要な役割を果たしています。様々な企業のニーズに応じた多種多様な貨車が、今日も日本の鉄道網を駆け抜けています。

関連項目

貨車
日本国有鉄道
郵便車
タンク車
ホッパ車
大物車
私有コンテナ
プライベートカー
サーカス列車
オリエント急行

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