近世哲学

近世哲学

近世哲学とは、中世の後から始まり、16世紀から20世紀までの間に展開された哲学のことを指します。この時期の哲学は「近代哲学」とも呼ばれ、特に思惟と存在の関係を考察する場面で、様々な立場の対立が見られました。中でも、大陸合理論とイギリス経験論の二大潮流が重要です。時代ごとにルネサンス期の思想、理性の時代、啓蒙時代、さらに19世紀と20世紀の哲学が影響し合いながら展開されました。

1. 近世哲学の背景

この期間の哲学の根底には、ルネサンスという文化的変革があります。16世紀から17世紀にかけて、数学や幾何学、自然哲学が急速に発展しました。ガリレオ・ガリレイは、自然界を数学的に理解する新しい視点を提示しました。このことで、世界の中心が神から人間に移り、「人間の理性」が機械的な自然を理解し、永遠で普遍的な真理に到達するとの認識が生まれました。この新たな世界観とともに、大陸合理論とイギリス経験論の2つの重要な哲学的潮流が現れたのです。

2. 大陸合理論

大陸合理論の代表的な哲学者は、ルネ・デカルトです。デカルトは数学的な知識が疑い得ないものであると考え、その上に自らの哲学体系を築こうとしました。彼は方法的懐疑論を主張し、外的世界が疑われる中で、疑いようのない純化された精神のみを残しました。デカルトによれば、精神には生得的な観念があり、理性によって観念を演繹していく能力があるとされます。これに対し、イギリス経験論者は「白紙状態」として生まれる人間を論じ、経験こそが観念の源泉だと主張しました。

2.1 主な哲学者

• - デカルト：大陸合理論の父で、懐疑論者。精神の内に生得的な観念を見出し、それを基に理論を展開。
• - マルブランシュ、スピノザ、ライプニッツ：デカルトの考えを受け継ぎつつ、各々が独自の哲学を展開。

3. イギリス経験論

イギリス経験論の基礎を築いたのは、ジョン・ロックです。ロックは、人間の観念が感覚や反省から生じるとし、知識の起源を経験に求めました。彼は観念を単純なものと複合的なものに区別し、その結合が知識を形成すると述べました。ロックは主観的認識と客観的認識の差異を考慮し、真理を直観的に捉えることができるとしつつも、物体に関する知識は確実性を欠くと示しました。これにより、彼は合理主義者としての側面も持つことになります。

3.1 主な哲学者

• - ロック：経験から生じる観念を重視し、物体に関する確実性を疑問視。
• - バークリ：ロックの理論を批判し、存在が知覚に依存するとの立場を取る。「存在とは知覚されることである」と言い表しました。
• - ヒューム：バークリの観念論を発展させ、自我を「感覚の束」と考え、因果関係の認識の限界を指摘。

4. カントの統合的アプローチ

イマヌエル・カントは、合理主義と経験主義の対立を統合した哲学者です。彼は、観念の発生が経験と関連することを認めつつ、すべての観念が経験から生まれるわけではないと反論しました。カントは、認識の基盤に「表象」を置き、感性と悟性の二つの認識形式を提唱します。また、彼は、「コペルニクス的転回」と称し、認識の構造が人間の認識能力に依存することを示しました。カントによると、時間や空間といった概念は人間に備わっているものであり、それらを通じて経験を処理し、知識を得るとされます。

このように、近世哲学は、理性や経験に基づく知識の獲得を探究し、個別の哲学者たちがそれぞれの立場から新たな視点を示してきた歴史的過程であるといえるでしょう。

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