遺贈

遺贈：遺言による財産承継の仕組み

遺贈とは、遺言によって、財産を特定の人に無償で譲渡することです。贈与とは異なり、契約ではなく遺言者の単独行為であり、受遺者（財産を受け取る人）が遺言者死亡時に生存していることが必要です。胎児は既に生まれたものとみなされ、受遺能力があります。受遺者が死亡した場合、遺贈は無効となりますが、遺言に別段の定めがあれば、それに従います。また、受遺者には相続と同様に欠格事由がないことが求められます。

遺贈の当事者

受遺者: 遺贈を受ける者です。遺言者の死亡時に生存している必要があります。胎児は例外的に受遺能力を有します。受遺者が死亡した場合、または遺贈を放棄した場合、原則としてその財産は相続人に帰属しますが、遺言に別段の定めがあれば、それに従います。受遺者の相続人が遺贈の承認または放棄をすることも可能です。

遺贈義務者: 遺贈を履行する義務を負う者です。原則として相続人がなります。相続人が不明な場合は相続財産清算人、遺言執行者がある場合はその者が義務を負います。包括受遺者も遺贈の履行義務を負います。

遺贈の種類と特徴

遺贈には、大きく分けて以下の種類があります。

1. 包括遺贈: 遺産の全部または一部を割合で指定する遺贈です。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有し、債務も引き継ぎます。放棄には家庭裁判所への申述が必要です。後継ぎ遺贈（順次財産を受け継ぐ者を指定する遺贈）は、民法に明示的な規定はありませんが、判例では認められるケースもあります。信託法では、後継ぎ遺贈と同様の効果を持つ受益者連続信託が認められています。

2. 特定遺贈: 具体的な特定の財産を対象とする遺贈です。借金などの消極財産は引き継ぎません。放棄はいつでもできますが、利害関係者からの催告を受ける可能性があります。遺言者の死亡と同時に受遺者に移転するとする判例もあります。

3. 負担付遺贈: 受遺者が一定の義務を負う遺贈です。義務の履行は遺贈の目的物の価値を超えてはならず、義務を履行しない場合は、相続人または遺言執行者は履行の催告を行い、それでも履行がない場合は遺言の取消しを家庭裁判所に請求できます。

担保責任と物上代位

不特定物を遺贈の目的とした場合、受遺者が第三者から追奪されたり、物に瑕疵があったりする場合、遺贈義務者は担保責任を負います。遺贈の目的物が滅失・変造・占有喪失した場合、遺言者が第三者に対して償金を請求する権利を有するならば、その権利が遺贈の目的物と推定されます。また、目的物が他の物と付合または混和した場合は、その全部または持分が遺贈の目的物と推定されます。第三者の権利の目的である財産の遺贈については、受遺者は遺贈義務者に対してその権利を消滅させるよう請求できませんが、遺言に反対の意思表示があれば例外となります。債権の遺贈の場合も、物上代位に関する規定が適用されます。

遺贈と不動産登記

遺贈によって不動産の所有権が移転した場合は、登記をしなければ第三者に対抗できません。ただし、相続人の一部に特定の遺産を相続させる旨の遺言の場合は、登記をしなくても第三者に対抗できる場合があります。

登記原因は、遺言書の文言に従って決定されます。原則として、相続人全員への相続は「相続」、相続人全員への特定遺贈は「遺贈」、相続人の一部への相続は「相続」、相続人の一部への遺贈は「遺贈」、相続人以外への相続は「遺贈」とされます。包括遺贈の場合は「相続」とされる例外があります。

登記申請にあたっては、登記の目的、登記原因、日付、申請人、添付情報など、詳細な情報が必要となります。包括遺贈の場合は、相続人または遺言執行者との共同申請が求められる場合もあります。登録免許税は、受遺者が相続人でない場合は不動産の価額の1,000分の20、相続人である場合は1,000分の4となります。農地を特定遺贈する場合は、農地法の許可書が必要になります。

この解説は、民法および関連法規に基づいていますが、個々の事案においては、専門家の助言を受けることが重要です。

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