里山

里山(さとやま)の概念と変遷

里山とは、集落や人里に隣接し、人間の影響を受けた生態系を有する山を指します。深い山を意味する深山（みやま）に対する言葉で、里山は地域住民と密接に関わる資源提供の場としての役割を担っています。

里山という名前の由来

「里山」という言葉が初めて文献に登場したのは、1759年に尾張藩の作成した「木曽御材木方」の中でのことです。「村里家居近き山」と記され、地域つながりの象徴的な存在として認識されていました。特に奈良県の吉野山地では、周囲の斜面を「サトヤマ」として畑や雑木林に利用されていたことが示されています。

里山の再評価と環境活動

1960年代から70年代にかけて、里山の重要性が再認識されるようになりました。特に京都大学の四手井綱英が「里山」という言葉を再定義し、それに基づく地域の言論活動が広まりました。また、写真家の今森光彦による1995年の写真集『里山物語』も、里山に対する視覚的理解を深めることに寄与しました。大阪自然環境保全協会の木下陸男が市民調査を導入し、多くの人々に実地体験を通じた里山の魅力を伝えています。

歴史の中の里山

縄文時代から人間活動が影響を与え、多くの森林が手により形成されてきました。三内丸山遺跡では、古代の人々が木の実や植物を利用していたことが明らかになっています。しかし、歴史が進むにつれ（特に畿内での乱伐行為によって）、里山は持続可能な利用とは言えない状態に陥ります。676年には天武天皇が木の伐採を禁じる勅令を出すほどでした。その後も森林破壊は進み、特に江戸時代には急激な人口増加に伴う材木需要が原因とされる、過剰な伐採が続きました。

近世・近代の里山とその利用

江戸時代には政府が森林保護政策に乗り出し、持続可能な利用が模索されました。しかし、近代化が進むと明治維新を境に木材の乱伐が横行し、戦中の物資不足時には再び里山の森林が失われました。1950年代に始まった国土緑化運動により復興の兆しが見えましたが、現在も宅地化や放置による危機が続いています。特に昭和30年代から化石燃料の普及が、里山の木材利用を減少させ、収入源を失わせました。

多様な利用法とその変遷

里山の利用は、薪炭林やアカマツ林のほか、製塩のための燃料供給など、多様です。薪炭林は10年から20年ごとに伐採され、アカマツ林は長期的な育成がされてきました。また、草山は水田耕作に必要な枯れ草を供給するために作られました。

近世までにはアカマツ林や禿げ山が主流でしたが、休耕や放置により、他の樹種がその場所に生えるケースも増えています。近年では孟宗竹などの侵入が問題視され、里山の植生が変化しています。

現代の里山の管理問題

里山は明治以降、日本の山林の利用形態が変化しました。国有林化や個人所有の細分化が進み、都市近辺では宅地化が進行しました。現在多くの里山が適切に管理されておらず、放置されることが一般的になり、環境問題に直面しています。特に相続税負担が重く、所有者が経済的に困窮する一因でもあります。

結論

里山は人類と自然の長い歴史の中で形作られてきた特異な場所であり、持続可能な利用を目指す新たな展望が求められています。現代の社会において、里山の価値を再認識し、次世代へと繋いでいくための取り組みが必要です。

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