今森光彦

今森光彦（いまもり みつひこ）は、1954年8月6日生まれの日本の写真家であり、切り絵作家としても知られています。滋賀県大津市出身で、日本写真家協会の会員です。弟には画家の今森洋輔がいます。

今森氏は、主に地元である滋賀県の里山を中心に活動し、そこに生息する昆虫や琵琶湖の自然を被写体としています。滋賀県は北部が日本海側気候、南部が瀬戸内海式気候という特徴から、季節と自然との関わりを繊細に捉えた作品が多いのが特徴です。1974年のカリマンタン島への渡航を皮切りに、海外にも積極的に足を運び、多様な自然環境を記録しています。

近畿大学理工学部土木工学科を卒業後、写真家を目指し、コマーシャルフォトスタジオで2年間技術を磨き、1980年にプロの写真家として独立しました。1984年には、大津市中心部から北へ約20km離れた、棚田や豊かな自然が残る仰木地区に活動拠点を移しました。

1988年には、1976年から琵琶湖周辺で撮影した1700点もの写真を収めた写真集『昆虫記』を発表しました。この作品は、身近な里山の自然に焦点を当てた点が国内外で高く評価され、姉妹版の『世界昆虫記』も出版され、フランス語とドイツ語にも翻訳されました。また、同時期には、自然史雑誌『アニマ』に『バッタの大発生』や『オオオニバスの不思議な受粉』といった作品や文章を発表するようになりました。1989年には、アリ植物セクロピアと共生するアステカアリの生態を描写した組写真『南米のアリ植物』で、動物写真の登竜門的な賞である「アニマ賞」を受賞しました。2000年以降は、NHKスペシャルの里山関係の作品制作に携わるなど、テレビ番組の制作にも積極的に関わっています。

弟の今森洋輔は細密画家として、滋賀県の淡水魚や野鳥を精緻に描いており、兄弟での共著も発表しています。また、写真家の星野道夫とも親交があり、星野氏は今森氏の滋賀県の自宅に滞在したこともあるそうです。

今森氏の主な作品には、『昆虫記』（1988年）、『スカラベ』（1991年）、『世界昆虫記』（1994年）、『里山物語』（1995年）、『萌木の国』（1999年）、『里山の道』（2001年）、『湖辺みずべ』と『藍い地球』（2004年）、『わたしの庭』（2005年）、『おじいちゃんは水のにおいがした』（2006年）などがあります。これらの作品は、自然の美しさや生命の尊さを伝えるとともに、身近な自然への関心を高めるきっかけとなっています。

受賞歴も多数あり、1989年の第6回アニマ賞を皮切りに、1991年の第10回東川賞新人作家賞、第17回滋賀県文化奨励賞、1994年の第48回毎日出版文化賞、1995年の第20回木村伊兵衛写真賞、第42回産経児童出版文化賞大賞、第9回大津市文化特別賞、第9回秀明文化賞などを受賞しています。2003年には第50回産経児童出版文化賞、第28回滋賀県文化賞、2004年には第51回産経児童出版文化賞、2006年には第53回産経児童出版文化賞、2007年には第56回小学館児童出版文化賞、2009年には第28回土門拳賞を受賞しています。

テレビ番組への出演も多く、NHK Eテレの『中高年のためのらくらくデジタル塾』では講師を務め、デジタル一眼レフでの撮影技術を教えています。また、NHK総合の『オーレリアンの庭 今森光彦 里山の四季を楽しむ』や、NHK BSプレミアムの『ワイルドライフ 今森光彦とめぐる琵琶湖 巨大水系に命あふれる』などの自然番組にも出演しています。さらに、NHK Eテレの『こころの時代「小さな命、大いなるいのち」』や、NHKラジオ第1放送の『NHKラジオ深夜便「オーレリアンの丘から四季便り」』など、多岐にわたるメディアで活躍しています。

今森光彦氏は、その写真作品や著作活動を通じて、自然の美しさや大切さを伝え、多くの人々に感動と学びを与え続けています。

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