野菜嫌い

野菜嫌いとは

野菜嫌いとは、特定の野菜に限らず、野菜全般を苦手とする偏食の一形態です。これは単なる好き嫌いというよりも、食感、味、香り、見た目など、さまざまな要因が複合的に絡み合って生じることがあります。

日本における野菜嫌いの経緯

高度経済成長期以降、日本の食生活は大きく変化しました。特に1970年代から1980年代にかけては、ファストフードやインスタント食品の普及とともに、野菜不足が問題視されるようになりました。1985年には、厚生省（現在の厚生労働省）が「健康づくりのための食生活指針」を発表し、「1日30品目を食べよう」と提唱しましたが、この提言は誤解を招き、「30品目」という数字にとらわれる傾向を生み出しました。その後、「○○品目」という表現は避けられるようになりました。

健康ブームの中で、インスタント食品や加工食品の栄養バランスの偏りが指摘されるようになり、特に不足しがちな野菜の摂取が推奨されるようになりました。この流れの中で、成長期の子どもたちには特に野菜を積極的に食べさせようとする動きが強まりました。しかし、その結果、無理強いされたり、叱責されたりすることで、野菜に対してトラウマを抱えてしまうケースも出てきました。

野菜嫌いの問題点

野菜を食べないことで叱責や罰を受ける経験は、野菜に対するネガティブな感情を強め、偏食を悪化させる原因となることがあります。また、学校給食で野菜を残した児童に対し、教師が無理やり食べさせるという体罰的な指導が行われたこともありました。このような問題点を踏まえ、1990年代以降は、野菜を無理に食べさせるのではなく、調理方法を工夫して美味しく食べさせるという方向へと変化していきました。

みじん切りにして見た目をわからなくしたり、他の料理に混ぜて隠したりする方法も用いられましたが、かえって不信感を抱かせることもありました。しかし、調理の工夫によって「美味しく食べられるようになった」という声も聞かれます。2000年代に入ると、より美味しい野菜料理のレシピが発表され、「野菜を隠さずに、美味しく食べる」という教育的なアプローチが推奨されています。

また、アレルギーを持つ児童に対し、理解のない教師が給食を無理に食べさせ、重篤な状態に陥った事例も報告されています。これにより、「理由のない偏食」と決めつけて強引に矯正することの是非が問われるようになりました。

野菜嫌いと調理方法

野菜嫌いの原因として、味（渋み、苦味、匂い、食感）が挙げられます。また、野菜の形状や色によって、連想から拒否感を抱くこともあります。

味の工夫

加熱調理によって、野菜の渋みや苦味、刺激臭を和らげることができます。また、加熱によって甘みが増す野菜もあります。柔らかくしたり、ペースト状にすることで食べやすくなる場合もあります。

見た目の工夫

みじん切りや他の料理に混ぜ込むことで、野菜の存在をわかりにくくすることができます。ハンバーグやカレーなど、子供が好きな料理に混ぜることで、より食べやすくなります。また、シチューのように、野菜をユニークな形にして興味を引くという方法もあります。

その他の工夫

葉野菜は、茹でることでアクが抜け、食べやすくなります。お浸しにしたり、他の料理に添えたりすることで美味しく食べられます。野菜炒めのように、肉と野菜を一緒に調理することで、子供にも食べやすくなります。マヨネーズやドレッシングを工夫することで、生野菜や温野菜を美味しく食べられることもあります。

その他の工夫

野菜に関心を持たせることも効果的な方法の一つです。家庭菜園やプランター栽培で野菜を育て、収穫したものを食べることで、食育的な効果が期待できます。野菜を育てる体験を通じて、農業や生命に対する理解や関心を深めることができます。

また、絵本などを通じて、強制ではない形で野菜嫌いの克服を目指す試みもあります。各栄養素の説明ができる年齢になれば、根気強い説得で食べてもらうことも可能です。

野菜の質について

市場経済の中で、品種改良や旬を無視した栽培、肥料の過剰施用によって、野菜の味が落ちているという指摘もあります。旬の野菜は、味が良く栄養価も高い傾向があります。地産地消の観点からも、旬の食材を地域で消費することが推奨されています。

関連項目

スローフード
離乳食
肥満
サプリメント
野菜ジュース
各種野菜のポタージュ、ガスパチョ

離乳食と野菜

この頃の食生活体験が、その後の好みに影響を与えるという説もあり、離乳食の段階から積極的に野菜を取り入れることが推奨されています。また、乳幼児に与えやすい調理法も開発されています。

肥満と野菜嫌い

一般的に、野菜嫌いは肥満に繋がりやすいと考えられています。これは、肉料理中心の食生活になりやすいことが要因の一つです。

サプリメントでの代替

野菜の栄養をサプリメントで代替する人もいますが、サプリメントで全ての栄養を補えるわけではありません。

野菜ジュース

野菜ジュースは、忙しい人にとって手軽に野菜を摂取できる手段ですが、生野菜特有の渋みや酸味があるため、野菜嫌いの人は特に嫌う傾向があります。

ポタージュなど

野菜嫌いの人向けにポタージュなどが用いられることがありますが、市販品が少ないことや、調理法によっては野菜の風味が強調されてしまうことがあります。

まとめ

野菜嫌いは、単なる好き嫌いではなく、過去の経験や食生活、野菜に対する知識などが複雑に絡み合って生じます。野菜嫌いを克服するためには、無理強いするのではなく、調理方法を工夫したり、野菜に関心を持たせたり、食育的なアプローチをすることが大切です。

もう一度検索