健康ブーム

健康ブームとは

健康ブームとは、健康な状態を維持したい、あるいは今よりもさらに健康になりたいという願望から、健康関連の商品やサービスに注目が集まる社会現象を指します。近年、日本では高齢化の進行やメディアによる情報過多により、この傾向は強まっています。

概要

「たくさん働けばお金が手に入り、幸せになれる」「そのためには健康でなければならない」という価値観は古くから存在していました。現代社会では、様々な産業が人々の不安を煽り、自社製品やサービスを宣伝する傾向が強いため、健康に対する関心はさらに高まっています。その結果、健康は何かを達成するための手段ではなく、健康自体が目的となる傾向が見られます。この「健康になるための手段」に対する社会的な流行現象が「健康ブーム」と呼ばれるのです。

対象となるものは多岐にわたり、健康食品、サプリメント（ポリフェノール、ビタミン、アミノ酸など）、ミネラルウォーター、ダイエットグッズ、健康グッズ、スポーツ、ジョギング、ウォーキング、温泉ブームなどが挙げられます。

流行と科学的・医学的な妥当性

メディアで健康関連の情報が取り上げられる際、専門家のお墨付きや学会発表された説であることが強調されることがあります。しかし、専門家と称する人物の博士号が、実態のない機関から発行されたものであったり、専門外の分野の博士号であったりすることがあります。また、学会発表された学説についても、単なる仮説に過ぎず、追試や検証が行われていない場合があります。中には、その仮説を主張する本人や関係者が立ち上げた、名ばかりの学会であることさえあります。書籍も、ある健康法を宣伝するための媒体として利用されるケースも少なくありません。

市場に流通する健康商品が、必ずしも健康に寄与するとは限りません。時には、逆に健康を害することもあります。

健康ブームにまつわる問題のあった事例

過去には、健康ブームの影で様々な問題が発生しており、その都度、過度な健康信仰に対する警鐘が鳴らされてきました。しかし、問題が忘れ去られると、すぐに新しい健康法が流行するのが常です。

フラフープ

1970年代に流行した健康器具です。直径30cmほどの丸い板に乗り、腰をひねる運動が推奨されました。しかし、熱心に行いすぎるあまり、腸捻転や腰椎を痛める人が出ました。当初はもてはやしたメディアも、危険性を指摘し始めると、ブームは廃れていきました。

ジョギング・ウォーキング

ジョギングは比較的古くからある健康法ですが、「無理をすればより健康になる」という誤った考えから、熱中症や疲労骨折、呼吸器疾患、循環器系の疾患を悪化させる事例が見られます。また、夜間に運動する人が増えたため、防犯や交通安全上の問題も指摘されています。警察庁は、夜間の外出時には明るい色の服を着用し、反射材を使うことを推奨しています。

ダイエット

美容と健康のために、食事制限を行うダイエットが一般的ですが、過度なカロリー制限により、健康を害したり栄養失調になることがあります。偏った食生活を推奨するダイエット法も問題です。

チョコレート・ココア

ポリフェノールの抗酸化作用が注目されるにつれて、チョコレートやココアなどのカカオ由来食品が人気を集めました。しかし、カカオには脂肪分が多く含まれている上、砂糖も多量に使われているため、カロリーが高いという問題があります。過剰摂取は高脂血症や糖尿病の悪化を招く可能性があります。また、赤ワインに含まれるポリフェノールも注目されましたが、飲み過ぎによるアルコール中毒も問題となりました。

アマメシバ

アマメシバは、ビタミンや鉄分、カルシウムが豊富で母乳の出を良くする効果も知られています。しかし、未加熱のアマメシバにはパパベリンの副作用による呼吸器疾患のリスクがあり、台湾では死者も出ています。日本でも健康被害の報告があり、厚生労働省が注意を呼び掛けています。

エフェドラ

エフェドラは麻黄の薬効成分で、興奮作用により消費カロリーを増やす効果があるため、ダイエット薬として流行しました。しかし、服用して運動すると熱中症で死亡する事例が多発し、米国では販売が禁止されました。日本でも厚生労働省から勧告が出ています。

マイナスイオン

マイナスイオンの効果は、科学的に十分に解明されておらず、効果を実感できないという消費者からの相談も多く寄せられています。製品の中には効果を検証せずに製造されているものもあり、不確かな情報が独り歩きしている状況です。

ザクロ

ザクロにエストロゲンは含まれていません。また、血流改善、美容、抗ガン、膵臓機能改善などの効果も確認されていません。

まとめ

健康ブームは、人々の健康への関心の高まりを示す一方で、科学的根拠のない情報や過剰な健康志向に起因する問題も多く存在します。過去の事例から学ぶべき点は多く、健康に関する情報は慎重に見極める必要があります。健康を維持・向上させるためには、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な休息が不可欠です。

脚注

外部リンク

* 食品・サプリメントと医薬品の相互作用（PDF）社団法人日本分析化学会

もう一度検索